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テーマ : 牧之原市

安全の在り方保育者に提言 牧之原バス置き去り検証委 「再発」はなぜ 議論大詰め【届かぬ声 子どもの現場は今】

 2022年9月に牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で園児が送迎バスに置き去りにされ熱中症で亡くなった事件の検証委員会は、最終報告に向け大詰めの協議に入った。委員が同園の「廃園」に言及するなど議論の過程で厳しい意見が出たが、検証委の権限上、報告書では直接的な表現は見送る方針を固めた。ただ、安全意識に欠けていた組織風土を強く批判する姿勢は変わらず、報告書では経営トップや園長の管理体制、保育者の資質など根本的な在り方を全ての保育関係者に問うとみられる。

牧之原市の園児送迎バス置き去り事件で㊤原因や再発防止策を検討する検証委員会と㊦園児が置き去りにされた送迎バス㊧のコラージュ(写真の一部を加工しています)
牧之原市の園児送迎バス置き去り事件で㊤原因や再発防止策を検討する検証委員会と㊦園児が置き去りにされた送迎バス㊧のコラージュ(写真の一部を加工しています)


 「多くの問題を明らかにできた。園への辛辣(しんらつ)な批判も相次いだ」。1月下旬、同市内で6回目の会合を終えた委員は一定の手応えを口にした。
 遺族が運営法人に廃園か他法人への引き継ぎを求めて署名活動を行っているさなかの議論。関係者によると、一部の委員からも「廃園や法人の交代を提言すべき」との厳しい意見が上がった。検証委に廃園などを命じる権限はなく、再発防止へ普遍的な提言を打ち出すのが一般的とされる中で異例の議論といえた。1月下旬の会合では「提言は当該園に向けたものではない」(検証委関係者)として、川崎幼稚園に向けた直接的な表現を使わない方向でまとまったという。
 検証委は21年7月に福岡県中間市で起きた同様の置き去り死がわずか1年で繰り返された事態を重くみて、組織的な問題点の洗い出しに注力してきた。
 福岡では当時5歳の男児が保育園の送迎バスに置き去りにされて亡くなった。保育園長=当時=が日常的に1人でバスを運行していたことなどが問題視されたが、わずか約1年後、川崎幼稚園はバスに運転手の前園長と乗務員が乗車しながら園児を車内に取り残し、クラス担任らは園児の所在不明の状態を放置した。
 委員の一人は「福岡の反省がなぜ生かされなかったのか、なぜ自分事として感じなかったのか。(最終報告の提言は)研修の実施やマニュアルの徹底といった機械的な話にとどめられない」と胸の内を明かした。報告書は3月末までの提出を目指している。
 保育施設で重大事故が起きた場合、都道府県や市町村は子ども・子育て支援新制度に伴う16年の国通知に基づき、学識経験者らで構成する検証委員会を設置して原因の分析などに当たる。報告書は当該自治体だけでなく国にも提出され、こども家庭庁が睡眠中の事故や誤嚥(ごえん)など全国41の事例について報告書をホームページで公開している。
(「届かぬ声」取材班)

 <メモ>2022年9月5日、牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」で園児の河本千奈ちゃん=当時(3)=が送迎バスに約5時間置き去りにされ、重度の熱中症(熱射病)で亡くなった。県警は22年12月、園関係者4人を業務上過失致死容疑で書類送検し、うち当日バスを運転していた前園長(74)と千奈ちゃんの当時のクラス担任(48)が23年11月、同罪で在宅起訴された。遺族らは「保育業界全体の質の低下につながりかねない」として、運営法人に廃園か他法人への引き継ぎを求める署名活動を行っている。

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