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テーマ : 牧之原市

牧之原市片浜地区 大鐘家、江戸の風情残す 庭園整備で観光名所に【わたしの街から】

 戦国時代に柴田、豊臣家の家臣だった大鐘(おおがね)家。時代の流れとともに遠州相良(現・牧之原市)に移り、江戸中期には大庄屋として地域を治めた。その頃に築かれた長屋門、母屋は国の重要文化財に指定され、屋敷周辺には当市ゆかりの偉人田沼意次の足跡も残る。今日では子孫が歴史を次代に継承しようと建物の管理を続ける。アジサイやスイフヨウなど季節ごとにさまざまな花が咲き誇り、「花庄屋」として地域住民に親しまれている。国指定重要文化財の長屋門=牧之原市片浜
 夏には多くの観光客が訪れる静波海岸、さがらサンビーチのほぼ中間に位置する片浜地区。国道150号から外れ、広大な茶畑が広がる台地に向かっていくと江戸期の面影を残した建築物が目の前に広がる。国指定重要文化財の長屋門と母屋が建てられたのは18世紀。母屋に入ると頭上にはクロマツを使用した大きな梁(はり)が何層にも組まれ大きな存在感を放つ。手斧(ちょうな)削りが当時の建築様式を色濃く残す。大鐘家に残された当時の食器や貴重な掛け軸を展示する史料館も併設され、当時の人々の暮らしを今に伝える。初夏には約1万本のアジサイが楽しめる
 大鐘家と牧之原市の歴史は戦国時代後期にさかのぼる。尾張(現・愛知県西部)出身の7代目当主の大鐘藤八郎貞綱は同郷の柴田家の家老として各地の合戦で奮戦。その後は豊臣家に仕え、掛川城主となった山内一豊の命によって現在の場所に移り住んだとされる。帰農した後、地域を治める大庄屋となり現存する屋敷を築いたという。江戸時代の建築様式が見られる母屋の内部
 大鐘家を管理しているのは24代目当主の弟の大鐘正典さん(68)だ。正典さんは兄弟と自分たちの祖先が残した宝を地域の名所として残そうと、1994年から同所で観光客を受け入れている。今では花の名所として親しまれる同所だが、当初屋敷の周辺は田んぼに囲まれていた。正典さんは土地を埋め立てるところから始め、初夏には約1万本のアジサイ、秋にはスイフヨウが咲き誇る庭園に整備した。正典さんは「地域に開かれた大鐘家の歴史をまだ終わらせるわけにはいかない。多くの人に歴史を知ってもらい、非日常的な空間を楽しんでもらいたい」と言葉に力を込めた。「非日常的な空間を楽しんでもらいたい」と話す大鐘正典さん
特産・自然薯ふんだん そば処 門膳「田沼膳」  県内有数の茶どころとして知られる牧之原市では自然薯(じねんじょ)の栽培も盛んだ。大鐘家に隣接する飲食店「そば処 門膳」では、地元農家が生産した自然薯を使った料理を提供し、訪れた観光客に特産品をアピールしている。こだわりのとろろを麦ご飯やそばにかけて楽しめる「田沼膳」=牧之原市片浜
 一押しは、店舗正面にある田沼街道にあやかり名付けた「田沼膳」だ。カツオやこんぶだしの配合で味や風味にこだわったとろろを麦ご飯と手打ちそばの両方にかけて味わうことができる。
 自然薯だけでなく、米や野菜も地元産を使用する。歴史的な建造物を見学した後は、胃袋を満たしながら牧之原の魅力を感じてみてはいかがだろうか。

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