あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 牧之原市

富士宮市根原地区 住民つなぐ「ヤナギ飾り」のどんど焼き【わたしの街から】

どんど焼きの火を囲む住民=富士宮市根原富士宮市 根原地区
 全国各地で年始の風物詩となっているどんど焼き。富士宮市北端の根原地区には県内でも珍しい「ヤナギ飾り」が作られる。飾りは山梨県内で現在も続く地域があり、かつて甲斐国の関所があった根原地区まで伝わった可能性がある。防火などの願いを込めたヤナギ飾りの風習を集落の住民たちが守っている。
どんど焼きに合わせて住民が製作したヤナギ飾り
 ヤナギ飾りは、高さ10メートルほどの御神木の中心あたりから色紙で装飾した幅約3センチの竹材を垂らした物。上部は三つまたで日の丸の扇が取り付けられる。竹がヤナギの枝のようにしなる様から名付けられたとみられる。根原のどんど焼きは1月14日に固定されていて、飾りの用意は1週間前と決まっている。男性が竹割りなどの力仕事を担い、女性と子どもは色紙を折って花飾りを作る。道祖神の脇に立てて当日を待つ。
ヤナギ飾りを解体する住民防火を祈願してヤナギ飾りの一部を屋根に投げる地域住民=富士宮市根原
 ヤナギ飾りの起源はいまも解明されていないが、山梨県甲斐市や北杜市、身延町などで近年も実施されている記録がある。根原地区は1570年ごろから武田氏の支配下にあったとされ、江戸時代には駿河国と甲斐国の間の「根原関所」があった。山梨県側との交流は今も続き、吉川清人区長(72)によると「昔は県境を移動させようとする住民対抗行事があった」という。
 1950年12月、地区は大火に見舞われ集落の半分以上が焼失した。二度と大火が起こらないようにと新たな風習が生まれた。どんど焼きから1週間後にヤナギ飾りを解体する際、竹を1本ずつ外して輪になるよう結び、各住宅の屋根に放り投げる。
過疎進んでも「文化絶やさない」 30年間で人口4分の1  富士宮市街地から車で30分ほど離れた山間地の根原地区は深刻な速度で過疎化が進む。市の人口推計によると、同地区は2023年時点で26世帯47人。30年前の4分の1まで減った。
 ヤナギ飾りは1家につき1本との決まりがあり、世帯減とともにかつての壮大さは失われつつある。高齢化も顕著で、どんど焼き当日の酒席は乾杯程度と控えめになった。
 それでも住民らは老体でも文化を絶やすまいと、重たいヤナギ飾りを立てるための滑車台を地区の経費で設置した。毎年14日の開催は変えずに夕方開始に変更し、1人でも多くの参加を促す。吉川清人区長は「どんど焼きとヤナギ飾りは地域の結びつきを感じられる貴重な瞬間。自分の目が黒いうちは絶やすわけにいかない」と決意を新たにする。
 同地区の年中行事の大半は人手不足の影響を受け、遠方に住む地区出身者らを呼び集めて存続させている。「関所があって人が集まっただけの集落」と話す住民らは、現役世代の移住定住者がいない現状に頭を抱える。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

牧之原市の記事一覧

他の追っかけを読む