欠席時、確認せず２割 保護者への連絡 幼保で差【届かぬ声 子どもの現場は今⑧／第２章 保育者の悲鳴①園児の登園対応】
「今のところ、連絡がない子はいないですね」。４月中旬の朝、静岡市内の民間保育園。園児全員の出欠状況を確認できた瞬間、職員室に安堵（あんど）の空気が流れた。
牧之原市で起きた送迎バスへの園児置き去り事件を受け、毎朝、無断で欠席した園児がいた場合は担任が自ら電話で確認するルールを定めた。保育士の一人は言う。「今まで確認は１００％ではなかったけど、大きな事故はなかった。牧之原の件がなければ『そんなにする必要ある？』と思ったかもしれない」
昨年９月、認定こども園「川崎幼稚園」の園児の河本千奈ちゃん＝当時（３）＝が送迎バスに約５時間置き去りにされ、熱中症で亡くなった。バスを運転していた前園長は車内に千奈ちゃんを取り残し、担任や副担任は千奈ちゃんがいないことに気付きながら保護者や同僚に確かめなかった。
１１月には大阪府岸和田市で２歳の女児が父親の車に置き去りにされ、熱中症で亡くなる事件も起きた。父親が保育所に預けたと思い込んだのが原因だったが、国は保育所から女児がいないことに対する保護者への確認が漏れていた事実を重く捉えた。出欠状況について「バスによる送迎を行うかどうかにかかわらず、保護者への速やかな確認および情報共有の徹底」を図るよう、全国の幼稚園や保育園などに求めた。
静岡新聞社は「園児が登園せず保護者からの連絡もなかった場合、保護者に確認の連絡をしなかったことがあるか」を県内の保育者にアンケートで尋ねた。その結果、回答した３２３人中６３人（１９・５％）が「ある」と回答した。
勤務先の施設別にみると、「ある」と答えた人の割合は認可保育所が３０％（１１０人中３３人）と最も高く、認定こども園が２１・５％（１０７人中２３人）で続いた。認可保育所と認定こども園を合わせると、２５・８％（２１７人中５６人）に上り、４分の１を超える。連絡をしなかった理由として最も多かったのは「保護者に連絡する決まりになっていない」だった。
かつて県西部の認可保育所に勤めていた５０代の元保育士は「朝は親が送ってくるので、園児がいないならそれは親の責任と考えていた」と話す。県中部の認定こども園で働く３０代保育士は「（こども園が）保育園だった頃は『来るも来ないも保護者の自由。保育が必要なら登園してくるから、それを受け入れる』とのスタンスで、ほぼ連絡をしていなかった」と語った。過去に確認の電話を保護者に嫌がられた経験から、「怠ったというよりも（保護者に）配慮して連絡しなかった場合が多かった」とも明かした。
一方で、認可保育所と認定こども園で合わせて４分の１を超えた「保護者に連絡しなかったことがある」の割合が、幼稚園では６・３％（３２人中２人）にとどまった。教育機関の幼稚園と、福祉施設に位置付けられる保育園－。施設の性質によって出欠確認の徹底の度合いが異なる傾向が浮かんだ。千奈ちゃんが通っていたのは認定こども園の幼稚園部分だった。
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保育現場で起きる問題の背景に何があるのかを探るため、静岡新聞社は３～４月、県内の保育士や幼稚園教諭ら（元職含む）を対象にアンケートを行い、３２４人から有効回答を得た。園児が登園せず保護者からの連絡もない場合、「保護者に確認の連絡をしなかったことがある」と答えた割合が２割に上るなど、保育現場の現状が浮かび上がった。一向に改善されない人手不足や待遇に悩み、心身をすり減らしながらも懸命に子どもたちと向き合っている実情も明らかになった。アンケートの結果を交えながら、悲鳴ともいえる保育者たちの届かぬ声に迫る。
（「届かぬ声」取材班）
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