テーマ : 気象・災害

「土や木、また落ちてきそう...」 台風2号豪雨災害から半年 私有地崩落で浜松の住民困惑 被災ウナギ店は再出発

 静岡県内各地に多くの被害を出した6月の台風2号による豪雨災害から2日で半年がたつ。浜松市では1人が亡くなるなど、同市西区や北区、天竜区の山間部を中心に建物被害を伴う土砂災害が多発した。半年で災害復旧が進み再出発した被災者がいる一方で、今も元通りの生活に戻れず不安に駆られている住民もいる。

ブルーシートが掛けられたままの斜面を眺める菅原芳江さん=11月中旬、浜松市北区引佐町
ブルーシートが掛けられたままの斜面を眺める菅原芳江さん=11月中旬、浜松市北区引佐町
災害から難を逃れたウナギのタレでかば焼きを調理する舘理恵さん=11月28日午後、浜松市西区舘山寺町の舘山寺園
災害から難を逃れたウナギのタレでかば焼きを調理する舘理恵さん=11月28日午後、浜松市西区舘山寺町の舘山寺園
ブルーシートが掛けられたままの斜面を眺める菅原芳江さん=11月中旬、浜松市北区引佐町
災害から難を逃れたウナギのタレでかば焼きを調理する舘理恵さん=11月28日午後、浜松市西区舘山寺町の舘山寺園


 「半年たっても景色は変わらない」。11月中旬、北区引佐町の看護師菅原芳江さん(67)は自宅裏ののり面を眺めてため息をついた。土砂が崩れた斜面は私有地のため行政が復旧に介入できず、ブルーシートが掛けられたままになっている。土地所有者との話し合いで解決するしかないが、所有者とは連絡が付かず工事のめどは立っていない。
 市北土木整備事務所によると、市道に影響が生じる恐れがある場合は市が用地を買収して対応することはあるが、今回のケースは該当しないという。同事務所は災害後、崩落箇所の上を通る市道に縁石を設置し、雨水が斜面に流出するのを防ぐ工事を実施した。
 菅原さん宅は土砂が寝室に流入するなどし、準半壊と認定された。公的支援は見舞金と災害義援金の計約5万円。窓や雨戸は自力で補修したが、寝室は畳を外してベニヤ板を貼った状態で生活を続けている。「部屋を元に戻すのは難しい。雨が降る度に斜面の土や木がまた落ちてきそうで怖い」と不安は消えない。
 市内では土砂崩れにより2人が死傷、16件の建物被害が確認された。半年で災害復旧は着実に進み、1人が亡くなった同町の現場では崩落した土砂約2500立方メートルは撤去され、ブロック積みが崩れた市道の工事も年明け以降に始まる見込みだ。同事務所は「来夏の台風シーズンまでに終わらせたい」としている。
 西区舘山寺町のウナギ店「舘山寺園」。地域や舘山寺温泉の観光客から愛される人気店も調理場が土砂崩れの被害に遭い、休業を余儀なくされた。「頭が真っ白になった」。おかみの舘理恵さん(52)は当時をこう振り返る。
 1957年の創業から継ぎ足し来店客の心をつかんできた「ウナギのタレ」が難を逃れたことが希望の光となり、地域住民の声にも励まされた。調理場の改装などを経て約2カ月後に営業を再開し、徐々ににぎわいを取り戻しつつある。舘さんは「奇跡的に助かったこの味を守り続けていきたい」と力を込めた。
 (細江支局・大石真聖、浜松総局・池田悠太郎)

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