テーマ : 教育・子育て

スマホ・ネットの家庭内ルール どうしてる?④ キュレーター/読者の意見【賛否万論】

 前回の賛否万論では、保護者による管理「ペアレンタルコントロール」の必要性だけでなく、子どもたち自身の成長を促す「自律と他律」の考え方や具体的な家庭内ルールのアイデアなどを紹介しました。スマホやネットとの適度な距離感とそのリテラシー習熟のバランスは、今後のICT教育に欠かせないものになっていくと思われます。皆さんはどう考えますか。今回はキュレーターと読者の意見を紹介します。

取り上げるのは親が安心したいだけ
キュレーター 杉山有希子さん(掛川市)


 

 

イベント会社「ママバトン」代表取締役。2男1女の母。10月から伴走型人づくりスクールを主宰。街づくりは人づくりから、の理念で人材育成に励む。

 わが家のルールと言えば、「やることをやってからにしてね」と、「自分でお金が払えないうちは課金は禁止」の二つです。時間制限はしていません。休みの日まで子どもの好きなことをコントロールしようとは思いません。
 よく「スマートフォンばかり見ていると依存する」とか「子どものネットは1時間以内って決めています」という親がいるけれど、そういう親に限ってスマホ依存だったりします。結局大人は子どもに勉強させたいんですよね。お勉強していてくれたら、親が安心だからです。だけど、スマホを取り上げたところで親の思うようにはならないのです。今の時代、スマホやネットが使えない方が問題かもしれないですね。これからは仕事もゲームのようにしていく時代だからです。
 子どもたちが、やりなさいやりなさいと言われるいわゆる「お勉強」の中には、子どもたちが知りたいことは入っていなくて、ただただ暗記をすることばかり。でも暗記できる知識はスマホが全部教えてくれる。スマホでタグれば(検索すれば)答えがすぐわかるのに、辞書の役割を持つそれを取り上げて「勉強しなさい」と言う大人たち。子どもたちはきっと笑っているんじゃないかな。
 私たちにも子ども時代は必ずあって、世の中ではやったりみんなが持っていたりするものって必ずこの先、役に立つものです。親が取り上げなくたって、必要なければ無くなっていきます。子どもはちゃんと分かっていて、うるさく言われなければ自分で考えます。
 もし、それでも本当にやめさせたいのなら、まずお母さんがスマホとネットから離れるといいですね。



「怖さ」伝え子の自制促す
読者 ひまじんさん(磐田市) 67歳

 わが家は大人3人の家庭である。おのおのがスマートフォンを持ち、自分の判断と責任で使っている。スマホについて思うことは「これはもろ刃の剣である」ということだ。連絡手段だけではなく、自分の世界を広げることもできるし、自分の居場所にもなる。しかし使い方を誤ると、金銭的負担や犯罪の被害者になったり、知らないうちに犯罪に加担させられたりする。また「スマホ脳」に代表されるような心身への悪影響。そしてスマホが持つ依存性も問題だろう。
 こういうものの使い方を、全面的に子どもの判断に任せるのは危険と言うほかない。しかし親が四六時中監視するわけにもいかないし、それではこどもも窮屈だろう。安易な意見で申し訳ないが、親子双方が納得できる妥協点を探し、それをルール化するしかないのだろう。もう一つは「スマホの持つ怖さ」を、学校なりでしっかり教育することだ。話し合い、言い聞かせることで子どもに自制を促していくことが大切である。
 こういうある意味子どもにとって有害になりかねないものを普及させ、使い方のルールについて十分な啓もうをしない通信各社もどうかと思う。大人も子どもも「スマホ依存」が社会問題になっている。それをハード・ソフト両面から是正していく方策を考えるのも、通信各社の社会的責務ではないだろうか。売りっぱなしで後はどうなろうと知らないというつもりだとすれば、あまりに無責任である。スマホは使い方を間違えなければ、まさに万能のツールなのだから。



親もけじめつけ「背中」見せて
読者 桑原清剛さん(袋井市)

 先の新聞で県教委の調査報告に小学生は4割、中学生は8割、高校生はほぼ全員がスマートフォンを使っているという。今や完全に生活になくてはならない〝怪物くん〟だ。
 ただ、小学生、中学生は自分の主たる活動(勉強)や知識の向上に、今必要であるかと言われればそうだとも言い切れない。しかし、現代における集団生活には持っていないと無視されて放れ駒になるのも耐え難い。高校生になれば自立心から将来の目標達成のため課題の解決の糸口になると思えば、ほぼ全員が持っているのも納得。そこで、一番の問題は親がどうコントロールするかだ。小学生は学校に塾、それに加えて英語の習得が強化された中での一時の休憩にスマホで遊びたいのも分かる。ストレス解消になるなら申し分ない。
 そこで提案だが、スマホを買い与えるのではなく、子どもが活動等に必要だから欲しいと言えば与えれば良い。まず基本を覚えてもらうこと。「子どもは親の背中を見て育つ」というように親がしっかりけじめをつけ、コミュニケーションを取りながら短時間一緒に遊んであげて。
 スマホも使い方次第で安否確認や防犯のツールにもなる。一方で、人工で作った光には目に強い刺激がある。一番大事なことは、発達中の子どもの視神経に異変を起こさせてはならないこと。だから、長時間の使用は決して良いとは言えないことも、使う前に教えておく必要がある。
 現代社会は「スマホで予約、カードで決済」が当たり前の時代になった。くれぐれもスマホには予備電源を忘れずに!



もはや体の一部 健康管理が大切
キュレーター 江口裕司さん(三島市)

 

 

メーカーで米国勤務後、設計、製造、調達、翻訳、ISO、社内教育など多様な業務に携わり定年退職。現在、パートの傍ら、大学再入学を目指し勉強中。65歳。

 私にスマートフォンの使用ルールを語る資格は無いんです。スマホを持ってないので。でも、スマホを嫌う理由を整理すればヒントになるかもしれません。
 私は根っからのアナログ派。スマホは生きること自体を効率化するようで気味が悪いんです。生得的な人間のリズムとぬれ手に粟[あわ]のスマホの即時性が整合するとは思えません。二者択一的は嫌い。その間で揺れ動いていたい。
 似た情報や自分が欲する情報に触れ続けることで、自分の意見があたかも一般論のように感じてしまう「フィルターバブル・エコーチェンバー」の落とし穴も怖い。その危機感について、本紙でも度々登場する山極寿一氏は「スマホを捨てたい子どもたち」(ポプラ新書)でこう説明します。「見えないこと聞こえないことに五感で傾注するのが人間本来の知性。都合のいい情報だけで世界が成り立つと錯覚すればリアルな世界とのすり合わせに困惑し、人は閉じこもったり暴力的になったりする」
 ベストセラー「スマホ脳」(新潮新書)の著者アンデシュ・ハンセン氏も、こう警鐘を鳴らします。「デジタル性健忘は情報がどこにあるかを最優先し、知識の関連付けの放棄で思考停止する脳癖。とはいえスマホの使用制限は、スマホを無視する脳の処理自体が脳の負担となり、集中力を失うこともある」
 昭和の時代、テレビを何時間も見ているとバカになると注意されたものです。でもテレビ漬けだったアナタ。おバカには見えませんね。スマホも同じではないでしょうか。多くの学者は、スマホの容認で犯罪、いじめ、依存、学力低下、コミュ障、二値的思考のリスクが高まると指摘します。でも逆にスマホがそれらを解決する可能性もありませんか?
 スマホの監視性、即時性は、悪事の抑制にも活躍しそうです。いっそ学校の授業でゲーム大会でもやれば帰宅後の依存は防げそうです。グループチャットでディベートすれば主体的な学びになり、抽象化思考や論理的思考に磨きがかかるかもしれませんよ。
 そろそろ結論。どうせなら徹底的に使ったらどうでしょう。周囲を観察する限りスマホはもはや体の一部。それがあれば何でもできるけど、無いと何もできない利器は臓器みたいなもんでしょう。臓器なら暴飲暴食は禁物。健康管理のルールも大切です。その処方箋に身近な読書はいかがでしょう。メーテルリンク「青い鳥」とサン=テグジュペリ「星の王子さま」にヒント満載です。「青い鳥を探しに地球に迷い込んだ星の王子さまにチルチルとミチルが問いかけます。『何をそんなに検索しているの? 正解? それは本当に求めていること? まずは自分の心の中を検索してごらんよ。本当に探しているものが見えてくるかもよ』」
 こんな合成処方も一案です。スマホにではなく、自分の心に依存する。それがいつでも正解ではないでしょうか。



 次回も同じテーマでしずしんニュースキュレーターや読者の意見を紹介します。
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