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テーマ : 熱海市

関東大震災100年 静岡県東部の甚大被害、写真や映像で発信 市町役場や行政SNS

 1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災から100年。被害を受けた静岡県東部の市町などが、当時の写真を企画展やSNSで積極公開している。職員らは「関東と名が付くから県内は無関係とのイメージがある」と地元で起きた災害であることを強く発信し、発生100年を契機に住民の防災意識の向上につなげている。

写真や映像で関東大震災の被害を伝える企画展=8月30日、小山町役場本庁舎
写真や映像で関東大震災の被害を伝える企画展=8月30日、小山町役場本庁舎

 押しつぶされた建物、崩落した鉄橋、焼けた工場-。小山町が町役場本庁舎で開催中の企画展には、惨状を伝える写真が並び、映像も放映している。所用で町役場を訪ねた岩田則美さん(78)=同町藤曲=は「親戚から町が被害に遭ったと聞いてはいたが、こんなにひどいとは」と見入った。
 県大正震災誌や小山町史によると、同町は県内で唯一震度7を観測した。地区によっては土砂崩れの影響も含めて9割以上の家屋が倒壊した。工場の倒壊と火災の影響が大きく、死者は県内市町別で最多とみられる149人に上った。企画展では捜索に当たる人や避難小屋で生活する人を捉えた写真もあり、被災直後の人々の苦悩が見て取れる。
 展示品の一部を町に提供した土屋和彦さん(70)=同町菅沼=は「百聞は一見にしかず。自分が住む町でこれだけの被害があったと多くの人に知ってほしい」と願う。近年は水害被害が多く、地震の警戒感が薄くなる中「地震への備えも必要と伝えるのに有効」と永井利弘防災専門監は話す。津波が襲来した伊東市と熱海市も企画展を開催中だ。
 県東部地域局は20~30代を意識してX(旧ツイッター)とインスタグラムを活用し、被害状況に加えて備蓄品などの防災情報も発信する。ペットボトルを使い液状化現象を再現する投稿は、同局のインスタグラムで過去最多の閲覧数を集めた。担当者は「重たいテーマだが気軽に見てもらえるよう心がけた。防災につなげてこそ意味がある」と強調する。
 (東部総局・矢嶋宏行)

各地に慰霊の場 工場被災の小山、犠牲100人超
 関東大震災の犠牲者の慰霊碑や供養塔は各地にあり、いまも地元住民や関係者が足を運んで慰霊を続けている。
 小山町の甘露寺と乗光寺には、当時同町にあった富士紡績(現富士紡ホールディングス)工場の従業員の供養塔が立つ。寺によると、盆や彼岸時期にお参りに訪れる人がいる。同社関係者も定期的に来訪する。
 レンガ造りだった工場は倒壊し火災も発生。犠牲者123人の多くは若くして親元を離れ働く女性だったという。乗光寺の福山宗完住職(59)は「安らかに眠っていただきたい」と話す。

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