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テーマ : 熱海市

土木担い手不足 打破遠く 業界、イメージアップに懸命

 全国で土木の担い手不足が叫ばれて久しい。静岡県も県建設業協会が2022年に実施したアンケートによると、回答した140社の従業員数は計4378人で、21年の調査(135社回答)に比べ2割以上減少した。県や建設業界は若者に土木の魅力を知ってもらおうと工事現場や最先端技術の見学会などを開いているが、現状打破の兆しが見えない。専門家は「官民が一昔前の業界のイメージを払拭することに重点を置きすぎている」と指摘し、若者へのアプローチの在り方を見直すべきだと提言する。

土木工事の現場見学会で説明を受ける大学生。担い手確保につなげようと業界は必死だ=焼津市
土木工事の現場見学会で説明を受ける大学生。担い手確保につなげようと業界は必死だ=焼津市

専門家 「社会貢献意識に訴求を」  同協会のアンケートでは、22年に新卒採用を実施したと答えた39社の採用数は計130人(求人充足率43%)。21年は33社で計179人(同50%)だったことを踏まえると、人材確保の厳しさは増している。
 同協会の担当者は「見学会などを開催するとそれなりに人は集まるが、進学や就職とは別」と嘆く。人材難に苦しむ県東部の建設会社社長(73)は「親世代に『3K(きつい、汚い、危険)』の印象が根強く、子どもの進路選択に影響しているのでは」と語る。
 県は建設業界と連携し、小中高生や大学生向けの現場見学会をはじめ、保護者を含めた「親子インフラツーリズム」などを通じて土木の魅力発信に努めている。「脱3K」を掲げ、完全週休2日の徹底など労働環境の改善をアピールする企業も少なくない。
 こうした取り組みに対し、22年に土木工学科を開設した静岡理工科大の中沢博志教授は「今の学生にとって3Kはもはや死語であり、週休2日制も当たり前。そこをアピールしても響かない」と指摘する。その上で、社会の中で自分がどのように貢献できるかを重視する学生が多いとし、「見学用の『つくられた現場』ではなく、生活に不可欠なインフラの整備や災害復旧などの工程を生の現場から学び、土木が社会を支えていることを知ってもらえるようにすることが重要だ」と強調する。
 (政治部・豊竹喬) 技術職員確保 行政も苦戦  公共工事を計画、発注する側の行政も土木技術職員の確保に苦戦している。2年前の大規模土石流からの復旧復興が課題になっている熱海市は、2021~23年度の新規採用がゼロ。採用試験に合格しても、併願した県や他自治体を選ばれるケースが多いという。
 現在は県や他市から派遣されている応援職員の力を借りて膨大な業務に当たっている。22年12月から土木経験者を対象にした任期付き職員の募集を始め、これまでに1人を採用したが、担当者は「定年退職者の再任用を含めても増員には至っていない」と窮状を明かす。
 県は国や他の都道府県、民間企業などに対抗するため、23年度から早期採用試験(大卒程度)を導入し、20人(受験倍率2.5倍)が合格した。定期採用試験の合格者9人を合わせると採用予定を5人上回ったが、最終的に定員を確保できるかは不透明だという。

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