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テーマ : 熱海市

尊富士、同郷の師に導かれ 熱海富士、翠富士も指導 伊勢ケ浜親方「子どもの頃から入門の話」

 大相撲の新入幕、尊富士[たけるふじ](24)が24日、大阪市浪速区のエディオンアリーナ大阪で千秋楽を迎えた春場所で初優勝を果たした。伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は、同じ青森県出身の尊富士が自身のしこ名を冠した「つがる旭富士ジュニアクラブ」で稽古を積んでいた当時から、「何とか部屋に入ってほしい」と願っていた。並外れた負けん気の強さ。「地元だし、子どもの頃から入門の話はずっとしてきた」と振り返る。

大相撲春場所で新入幕優勝を果たし、パレードに集まったファンに手を振る尊富士。左は錦富士=24日、大阪市
大相撲春場所で新入幕優勝を果たし、パレードに集まったファンに手を振る尊富士。左は錦富士=24日、大阪市

 日馬富士、照ノ富士の両横綱をはじめ、安美錦や熱海富士(熱海市出身)ら数多くの関取を育てた親方にとって、尊富士は3人目の幕内優勝力士。「人それぞれだから」という柔軟な指導方針の下、しばしば正午まで続くほどの厳しい朝稽古で才能を磨き上げてきた。力士の武器を見抜く眼力には定評がある。
 184センチ、143キロの尊富士は、現在の幕内にあっては決して大きな力士ではない。伊勢ケ浜親方はかつて「小さい力士を育てるのは得意な方かな」と謙遜気味に話したことがある。軽量だった日馬富士、小兵の照強や翠富士(焼津市出身)を育成。弟子の動きに目を光らせ、会心の内容には「それをずっとやっていれば大丈夫だ」と自信を植え付ける。
 伊勢ケ浜親方が「当たりが良くなってきた」と成長ぶりを口にすれば、「この部屋でなかったら、早くから活躍できなかった。自信になる」と尊富士。運命的な出会いを果たした師弟の夢が結実した。

 横綱が見せてくれた景色 今度は自力で 万感 Vパレード
 尊富士は前日の14日目に右足首を負傷しながら、痛みに耐えて強行出場。豪ノ山を破って自らの手で賜杯をつかみ取り、うれし涙を流した。患部にはテーピングを施し、表彰式へ向かう際も足を気にしてゆっくりと歩を進め、重圧から解き放たれた支度部屋で「もう一度やれと言われても無理」と明かすほどの状態だった。
 それでも、女手ひとつで育ててくれた母石岡桃子さん(47)への感謝を胸に土俵に上がり「親の夢になりたかった。小さい頃からやってきた相撲で恩返しできた」と感慨に浸る。青森県から急きょ駆け付けた桃子さんは、高校時代から度重なるけがに苦しむ息子の姿を見てきただけに「毎回いいところまでいって、けがをしてきた。初めての日本一がこういう形になり、震えが止まらない」と目元を拭った。
 夜になって、オープンカーで大阪市内をパレードした。兄弟子の横綱照ノ富士が制した先場所の千秋楽では、指名を受けて優勝パレードの旗手を務めた尊富士。「いい景色を見させてもらったが、まさか今場所で自分ができるとは思わなかった」と夢見心地の様子だった。

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