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テーマ : 熱海市

災対本部 初動で混乱 職員参集や情報共有ネック 悪条件下での訓練必要【能登半島 最大震度7 静岡新聞社現地ルポ⑤完】

 発災から10日目を迎えた石川県穴水町の災害対策本部。「死者20人。町政始まって以来だろう」。本部会議の冒頭、吉村光輝町長(53)の言葉に重苦しい空気が流れた。前日までに安否不明者がゼロとなり、孤立集落も解消したが、断水は依然続く。避難所では新型コロナウイルスやインフルエンザが広がり始めていた。
発災から10日目を迎えた石川県穴水町の災害対策本部会議=10日、同町役場
 元日夕方に襲った激震。吉村町長が町役場にたどり着いたのは発災30~40分後だった。当時、役場に到着していた職員はわずか5、6人。「この人数でやるべきことをやるしかない」。被害は全町に広がり、道路寸断による通行止めが至るところで発生していた。町の職員数は100人弱。次第に参集してきたが、被災や町外へ帰省していた職員もいて、全庁的な体制を取れたのは数日後だった。
能登半島
 石川県の資料によると、3日午後11時時点で、同町が確認した安否不明者は6人だったが、6日午後2時に12人に増えた。2家族14人が亡くなった同町由比ケ丘の土砂災害現場では、地域住民への聞き取りや巻き込まれた家屋の情報などが入り乱れ、不明者数の特定までに時間を要した。2021年に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を受け、石川県も昨年5月、発災後48時間をめどに安否不明者を公表する基準を定めていた。ただ、吉村町長は「基準を意識できていなかった」と打ち明ける。
 建物被害は少なくとも千戸に上り、町内全体の約7割が全壊や半壊とみられる。指定避難所以外にも住民が身を寄せ、避難者数は一時、人口の半分を超える約4千人まで膨れた。通信が途絶えたため職員が自力で聞いて回り、状況を把握したという。圧倒的なマンパワー不足があった。
 静岡県による同町災害対策本部の支援が本格的に始まったのは4日。「整然と対応しているとは言えなかった」。第1陣として現地入りした静岡県東部地域局の板坂孝司危機管理課長は町の中枢機能の混乱ぶりを振り返る。迅速な情報の収集、集約と共有がその後の救助や捜索、支援を左右する。静岡県からは関係機関が共通認識を持てるよう情報を資料にまとめるなどの“見える化”を提案した。
 通信環境の不安定さも初動対応のネックになった。板坂課長は「通信インフラ強化は必要だが、100%はない」と言い切る。本県でも被害情報を入力するシステムが使えず、防災無線や衛星携帯などで情報を集めて手作業で集計しなければならない可能性がある。「通常の本部運営訓練だけでなく、通信断絶などマイナスの条件で訓練しなければならない」と強調した。
住宅被害2万1400棟 倒壊免れた建物 35%「危険」  能登半島地震で、石川県内の住宅被害が2万1411棟に上ることが16日、分かった。倒壊を免れた建物を対象とした応急危険度判定では、15日までに完了した建物の約35%が、立ち入り禁止の「危険」と判定されていることも判明。1万6千人以上が避難所で過ごす中、仮設住宅など居住環境の整備が急務となる現状が浮き彫りになった。全国被災建築物応急危険度判定協議会によると、「危険」の割合は、阪神大震災が約14%、東日本大震災が約12%、熊本地震が約27%だった。

 <メモ>浜松市は3日から珠洲市の災害対策本部の支援に入った。通行できる道路や避難所の位置、他県を含めた応援要員の活動状況など、情報共有が課題になった。支援に入った当初は被災している職員が多く、参集できていたのは半数弱という。浜松市危機管理課の石原卓哉主任は、「職員が全員参集できない初期段階でどう応急業務に対応するか、より現実的な検討が必要」と振り返る。県は毎年4月に職員の参集訓練を実施している。発災30分以内に252人、1時間以内に378人との参集目標を定めている。

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