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テーマ : 熱海市

熱海土石流 砂防法観点、再び検証せず 静岡県の報告書分析

熱海土石流の内部検証の報告書。2003~06年の事実関係が砂防法の検証項目から抜けている
 熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流の行政対応を巡り、県が県議会に提出した内部検証(再検証)の報告書を本紙が12日までに分析したところ、崩落した盛り土が造成される前を中心に03~06年ごろに行われた分水嶺(れい)付近の開発などについての行政対応が、砂防法の観点から検証されていないことが分かった。同法の盛り土規制区域「砂防指定地」に指定する条件が整い、不適切な盛り土の造成を防げた可能性があるのに、第三者検証に続いて検証から漏れていた。
砂防法の観点から検証されなかった主な事実関係
 県の行政文書によると、土石流起点の逢初川源頭部左岸と北側の鳴沢川流域の分水嶺付近には約20年前に土採取場があり、県が03年に都市計画法の無許可開発として開発業者に行政処分を出した。06年には別の業者が開発許可を県に申請。これらの開発の影響で鳴沢川流域から水が流入し逢初川左岸の盛り土崩落に影響を与えた可能性が指摘されている。
 また、逢初川右岸側では、さらに別の業者が07年に県土採取等規制条例に基づく盛り土造成計画の届け出を市に提出した。届け出は市から県に送られ、情報共有されていた。
 報告書は検証対象の法令ごとに「各法令に関する事実関係」や「考察」などで構成。03~06年の分水嶺付近の開発は都市計画法の「事実関係」に記されているが、砂防法の「事実関係」に一切記されていない。開発を把握した際に上流全体を砂防指定地に指定すべきだったのか検証せず、07年の盛り土計画の届け出がどう情報共有されたのかも検証されていない。
 開発前の段階で国は上流全域を指定申請するよう求めたが、県は地権者の同意が得られずに先送りした。同意は法的要件ではない。国が砂防法に関連して示す指定基準には「土石流危険渓流」「開発が行われ、または予想される区域」が含まれ、逢初川上流域は03年以降、いずれも該当していた。
 国土交通省の担当者は取材に「(一般論として)流域変更で今までになかった水を呼んできたり、地下の水みちが変わったり、いろいろなことが起こり得る」と分水嶺開発の影響を指摘している。

 砂防法 盛り土崩落だけでなく土石流災害を防ぐ目的がある。急傾斜の地形が続く下流側に人家がある場合、指定基準を考慮し、盛り土などの開発規制区域「砂防指定地」を指定。指定地内は開発の規模や面積に関係なく規制がかかり、例外的に開発を認める場合でも安定計算が必要になるため、森林法や県土採取等規制条例よりも規制力が強い。未指定地で開発が始まった場合、直ちに規制できないが、区域指定した上で業者が防災工事の行政指導に一定期間、従わなければ工事命令を出せる。

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