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テーマ : 熱海市

砂防規制放置問題 再検討文書に静岡県職員「早急に編入必要」のメモ 熱海土石流

 熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川上流域で砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」の指定が放置された問題で、上流域で乱開発が始まる前の1998年の静岡県行政文書に「(流域を)早急に指定地に編入する必要がある」という職員のメモ書きがあることが8日までに分かった。開発の開始前に県が規制力の強い砂防法を適用する必要性を認識していた可能性がある。

県の行政文書に記された職員の手書きメモ(赤枠部分) ※赤枠は静岡新聞社が追記
県の行政文書に記された職員の手書きメモ(赤枠部分) ※赤枠は静岡新聞社が追記
熱海土石流を巡る砂防法の盛り土規制区域指定の経緯
熱海土石流を巡る砂防法の盛り土規制区域指定の経緯
県の行政文書に記された職員の手書きメモ(赤枠部分) ※赤枠は静岡新聞社が追記
熱海土石流を巡る砂防法の盛り土規制区域指定の経緯

 ただ、県が県議会の要請で進めている内部検証の経過報告書でメモ書きの記載は抜け落ちていて、検証されるのかは不透明だ。
 この文書は「砂防指定進達範囲の再検討について」のタイトルで、国から上流全域を盛り土規制区域に申請するよう求められたことに対し、県として再検討した結果を記した。県が上流全域の区域指定を目指して土地所有者と複数回協議したが同意を得られず、緊急性が比較的小さいとして指定申請を先送りした内容が本文に書かれていた。
 メモ書きは文書の余白にあり、手書きで「早急に指定地に編入する必要がある。しかし、前述のとおり、流域全域の指定は困難なったと」(原文ママ)と記載され、本文の「早急に砂防ダムを設置する必要はある」という部分が線で結ばれていた。
 県は2021年の土石流発生後も文書を公表せず、検証の論点や訴訟の対象になっていなかったが、関係文書の公表に漏れがあるという本紙の指摘を受けて今年8月にようやくウェブサイトに掲載した。
 県議会から求められ、県が実施中の内部検証で砂防法は検証対象に含まれているが、県砂防課の杉本敏彦課長は「文書は検証対象だが、当時の担当者にヒアリングしたところ『記憶がない』と言っていたので、これ以上は分からない」としてメモ書きの検証には否定的な見解を示した。
(社会部・大橋弘典)

 砂防法の盛り土規制区域 逢初川のような土石流危険渓流は砂防ダム上流全域を指定するのが原則。開発が行われたり、自然堆積土砂が崩れる「表面浸食」が起きたりする場合も指定する。砂防法は土砂の発生を抑えて下流域の人家や幹線道路などを土砂災害から守る目的があり、他の法令より規制力が強い。森林法や土採取等規制条例は開発行為が一定の面積を超えなければ規制できないが、砂防法は区域指定すれば、面積に関係なく初期段階で対応できる。不適切な盛り土の造成や開発行為を未然に防げる利点がある。

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