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テーマ : 熱海市

「手鑑『翰墨城』」 奈良~室町時代(8~15世紀) 311葉の古筆 収めた“宝箱” MOA美術館【コレクションから㉓】

 MOA美術館の創立者・岡田茂吉は、日本・中国の絵画、彫刻、陶磁器、漆工芸など、各分野の美術史を語る上で欠くことのできない作品を数多く収集した。書跡では国宝の手鑑[てかがみ]「翰墨城[かんぼくじょう]」をはじめ、古筆・墨跡など茶の湯の掛け物としての名品もある。

MOA美術館 「手鑑『翰墨城』」 奈良~室町時代(8~15世紀)
MOA美術館 「手鑑『翰墨城』」 奈良~室町時代(8~15世紀)
「手鑑『翰墨城』の内 白氏文集切 春遊 藤原行成」
「手鑑『翰墨城』の内 白氏文集切 春遊 藤原行成」
MOA美術館 「手鑑『翰墨城』」 奈良~室町時代(8~15世紀)
「手鑑『翰墨城』の内 白氏文集切 春遊 藤原行成」

 手鑑「翰墨城」は、「藻塩草」(京都国立博物館蔵)「見ぬ世の友」(出光美術館蔵)とともに、古筆三大手鑑の一つとして名高い。手鑑とは書の切[きれ]を系統的に、また鑑賞を便利にするための工夫として考案されたもので、厚手の紙で作られた折帖[おりちょう]の台紙に、古い書の切を貼り込んでいる。武家や公家においては、手鑑は大切な嫁入り道具ともなったという。
 また書の鑑定の専門家は、鑑定の基準となる代表的な切を折帖に貼った台帳を作成していた。当館の「翰墨城」は、手鑑の中でも早い時期に成立したと考えられ、鑑定専門家の古筆了仲(1655~1736年)に所伝し、のちに益田鈍翁(1847~1938年)が旧蔵した。
 「翰墨城」の名は、翰(筆)と墨によって築かれた城という意味で、まさに名筆の宝庫にふさわしい名称といえる。奈良時代から南北朝・室町時代の各時代にわたる古筆が、表側154葉、裏側157葉の合計311葉収められている。中には藤原行成の真筆として貴重な「春遊」などがある。
 (尾西勇・学芸課係長)

 メモ 熱海市桃山町26の2<電0557(84)2511>
 手鑑「翰墨城」は、27日まで開催中の「名品展 国宝『紅白梅図屏風』」で展示されている。

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