テーマ : ラグビー

大自在(9月9日)「視観察」

 英国で行われたフットボールの試合中、ラグビー校の生徒だったウィリアム・ウェブ・エリス少年がボールを抱えて走り出したのがラグビーの始まりとされる。200年前の話だが、当時は両チームを仲裁し試合を円滑に進める審判はいなかった。
 ラグビーでは、試合中に審判と直接やりとりが許される選手は、基本的に主将だけという。国際統括団体ワールドラグビーも「審判に意見を求め、審判の決定に関連するプレー選択を行う」のが主将だと定義する。審判からの注意や説明は、主将が他選手に伝える。独特なルールといえよう。
 エリス少年はラグビー・ワールドカップ(W杯)の優勝杯に名前を残す。W杯フランス大会が開幕。日本代表はあす、チリとの1次リーグ初戦を迎える。
 日本代表主将を務める姫野和樹選手が、他選手とコミュニケーションを取る時に心がけていることがある。「まずは相手を見る。よく見て、知ろうとする」。日本の資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一の「視観察」だ。
 「視」は相手の見た目や言動など外面を見ること。「観」はその言動の動機、つまり内面を知ること。「察」はさらに深く、相手が何に喜びを見いだすのか察することだと。トヨタ加入1年目から続けているラグビーノートを基にした自著「姫野ノート『弱さ』と闘う53の言葉」(飛鳥新社)に記した。
 地元開催の前回W杯で8強入りし、今大会も期待される日本代表。国籍や体格などが違う多様なメンバーの「人間性や本質」を見抜く姫野主将が、チームをまとめてくれるだろう。

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