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在日コリアンの誇りと桜を胸に ラグビーW杯出場果たした李選手

 ラグビー日本代表のスタンドオフ李承信選手(22)が、全国の朝鮮高級学校(朝高)出身者で初のワールドカップ(W杯)出場を果たした。在日コリアンの誇りと桜のエンブレムを胸に、29日のサモア戦後半にW杯デビューし、試合を締めくくる役割を全う。父の東慶さん(58)は「在日の子どもたちに、日本社会で輝ける場所があることを示してほしい」とさらなる活躍を期待する。

ラグビーW杯フランス大会1次リーグのサモア戦でタックルにいく李承信選手=28日、トゥールーズ(共同)
ラグビーW杯フランス大会1次リーグのサモア戦でタックルにいく李承信選手=28日、トゥールーズ(共同)

 神戸市生まれで韓国籍の在日3世。小中学は朝鮮学校に通いつつ、地元のラグビースクールに所属し、国籍を問わず多くの人に支えられた。小学6年生のころ、誰よりも応援してくれた母が病気で他界。「悲しさは全部ラグビーに注いだ」
 頭角を現し、大阪朝鮮高時代には高校日本代表の主将を務めるほどに。帝京大を経てトップリーグ(現リーグワン)の神戸製鋼に加入した。ラグビーは、国籍が違っても一定条件を満たせば代表資格が得られる。「日本代表になってW杯へ」という母の遺志に従い、桜のジャージーに袖を通すのに迷いはなかった。
 君が代を斉唱することに異論があるかもしれないとしつつ「本当に、日本のために勝ちたい気持ちで歌っている」と語る李選手。一方でルーツに強い誇りを持ち、自身の活躍を通じて「もっと在日社会を知ってもらえたら」と願う。
 在日社会は多くの差別を経験してきた。東慶さんは1995年の阪神大震災後、国籍を理由に、新居の賃貸契約を断られた。李選手が通った大阪朝高は高校無償化から除外されている。
 それでも「時代は変わってきた」と東慶さん。自身は通名を使っていたが、息子3人はいずれも本名でアスリートや会社員として活躍。個々のアイデンティティーを認める風潮が広がり、相互理解が深まったと感じる。李選手についても「いろいろな日本の文化を自分の中に落とし込んでいる」と話す。
 李選手の他にも、さまざまな国籍やバックグラウンドの選手が加わった日本代表。「多様性が一つにまとまった時、どれだけ素晴らしいものを生み出してくれるのか」。力を合わせて戦う息子らの姿に、東慶さんは大きな希望を抱く。

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