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社説(8月10日)大学運動部の大麻 啓発徹底し薬物一掃を

 学生スポーツ界に、大麻など違法薬物の乱用が広がっている。日本大アメリカンフットボール部の学生が覚醒剤と大麻を所持したとして5日、警視庁に逮捕された。今月初めには朝日大ラグビー部の部員3人、7月には東京農大ボクシング部の部員2人が、いずれも大麻取締法違反の疑いで逮捕された。
 大麻とその関連物質は、スポーツではドーピングの禁止物質に指定されている。トップレベルの選手として、違法薬物に対する認識が欠如していると言わざるを得ない。啓発活動の不足も汚染拡大の要因だろう。学生スポーツ界は、本気で薬物一掃に取り組まなければならない。
 近年、新型コロナウイルス禍でスポーツの対外活動が減少。自宅や寮で過ごす時間が長くなるなど、生活の変化が薬物使用のきっかけになっているという声もある。2020年にも日大ラグビー部員、近畿大サッカー部員、東海大硬式野球部員の大麻使用や所持が相次いで発覚し、大学スポーツを統括する大学スポーツ協会が、加盟大学や競技団体に注意を呼びかけた。だが、事態は悪化している。指導者や選手への研修などが十分といえないのではないか。
 学生スポーツ選手だけでなく、大麻絡みで摘発される若者は増加している。厚生労働省の薬物情勢統計によれば、22年に大麻関連事件の摘発者数は5546人。そのうち、30歳未満は69・2%で過去最多を更新した。静岡県でも昨年摘発された158人のうち30歳未満が106人。3年連続で100人を超えるなど若年層の薬物乱用拡大は深刻な状況だ。大麻は薬物汚染の「ゲートウエー(入り口)ドラッグ」と呼ばれる。ネット上には「健康に害がない」など誤った情報があふれ、交流サイト(SNS)などでも容易に入手できる。若い世代が抵抗なく大麻などに接触するリスクが常態化している。
 逮捕された日大アメフト部の学生は、学生寮内に覚醒剤と大麻を持ち込んでいた。何度も日本一に輝いている名門だが、5年前にはライバル校の主力選手を悪質な危険タックルで負傷させ、社会問題になった。指導者を公募するなど出直しを図ってきたが、その途上での不祥事だった。
 部員の大麻使用が疑われる情報は、昨秋から大学に寄せられていたという。7月6日に学生寮内で錠剤と植物片が見つかったが、警視庁への通報は12日後と遅れるなど、大学側の対応にも疑問が残る。
 日大は、21年の前理事長の脱税事件後、同大出身の人気作家、林真理子氏を新理事長に選出した。信頼回復を目指してきたが、体質は変わっていないと言われても仕方あるまい。

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