テーマ : ラグビー

日本結束でサモア撃破 8強へ前進 ラグビーW杯

 【トゥールーズ(フランス)共同】ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会第14日は28日、トゥールーズで1次リーグD組の1試合が行われ、日本がサモアに28-22で勝利し、2勝1敗で同組2位に浮上した。勝ち点4を獲得して9に伸ばし、2大会連続の8強入りへ前進した。

日本―サモア 後半、モールでトライを決めた姫野(下から2人目)=トゥールーズ(共同)
日本―サモア 後半、モールでトライを決めた姫野(下から2人目)=トゥールーズ(共同)
日本―サモア パスを出す斎藤=トゥールーズ(ゲッティ=共同)
日本―サモア パスを出す斎藤=トゥールーズ(ゲッティ=共同)
ラグビーW杯 1次リーグD組勝敗表
ラグビーW杯 1次リーグD組勝敗表
ラグビーW杯1次リーグ 日本―サモア・スコア、メンバー
ラグビーW杯1次リーグ 日本―サモア・スコア、メンバー
日本―サモア得点経過
日本―サモア得点経過
日本―サモア 後半、モールでトライを決めた姫野(下から2人目)=トゥールーズ(共同)
日本―サモア パスを出す斎藤=トゥールーズ(ゲッティ=共同)
ラグビーW杯 1次リーグD組勝敗表
ラグビーW杯1次リーグ 日本―サモア・スコア、メンバー
日本―サモア得点経過

 1次リーグ突破を懸け、10月8日に最終第4戦でアルゼンチンと当たる。3戦全勝のイングランドの1位通過が決定。
 日本は前半、13分にラブスカフニ(東京ベイ)、32分にリーチ(BL東京)がトライを奪い、17-8で折り返した。後半は姫野主将(トヨタ)のトライ、松田(埼玉)のPGで得点し、退場者の出た相手の反撃を振り切った。サモアは1勝2敗の勝ち点6。
 25日付世界ランキングで13位の日本は、同12位のサモアとW杯で3大会連続の対戦で3連勝。通算で6勝12敗となった。

 【1次リーグ】
 ▽D組
日本(9) 28(17-8 11-14)22 サモア(6)

 【評】序盤から主導権を握った日本が逃げ切った。前半13分、初先発のFBレメキの突破からラブスカフニのトライで先制。32分にはリーチがトライを奪い、17-8で折り返した。後半にもモールで押し込んで姫野がトライ。終盤に2トライを許して追い上げられたが、6点差で競り勝った。サモアは後半に退場者を出すなど規律を欠いた。

あわや逆転 6点差で逃げ切り 「侍タイム」苦境しのぐ
 終了間際にサモアのラインアウトが乱れ、ボールを奪い返した日本がタッチキック。あわや逆転負けのピンチをしのぎ、6点差でノーサイドの笛を聞いた。ジョセフ・ヘッドコーチは「この勝利のために本当に懸命にやってきた」。1次リーグ突破へ生き残りを懸けた決戦を制し、表情が和らいだ。
 SH流が負傷し、試合当日のメンバー変更で斎藤が先発することになった。それでも主将の姫野は「悲観的になりたくなかった」。斎藤はW杯初先発とは思えぬスムーズなボールさばきを見せる。FW、バックスが一体となったスピード感あふれる攻撃で前半に2トライを奪った。斎藤は「(先発でも)準備は変わらない。自信を持ってやり切った」と胸を張った。
 後半にはFW2人が入れ替わった直後、モールを押し込んでトライを挙げた。「全員がやることを分かっている」と姫野。W杯前は攻守に意思統一ができず調子が上がらなかったチームは、試合を重ねるごとに強固な塊になってきた。
 サモアの猛攻を受けた終盤、プレーが止まると選手たちは声を掛け合い、気合を入れ直した。名付けて「侍タイム」。後半の勝負どころで粘れなかったイングランド戦の反省から、つくられた合言葉だという。これでさらに結束を強め、猛タックルを続けて大事な勝利をたぐり寄せた。
 1次リーグ最終戦の相手は強豪アルゼンチン。勝てば無条件で8強入りが決まる。「もちろん勝つ。それ以外はない」とフッカー堀江。前回大会を超える成績を目指し、一丸となって高い壁に挑む。

 姫野 闘志のプレーで鼓舞 ジャッカル成功とトライ奪取
 背中でチームを引っ張った。ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会1次リーグD組で28日、サモアを28-22で破って2勝1敗とした日本。闘志あふれるプレーで仲間を鼓舞したのは、主将でナンバー8の姫野だった。負ければ1次リーグ突破が厳しくなる一戦を制し、「ほっとしている」と胸をなで下ろした。
 副主将のSH流がけがで出場を回避し、精神的支柱のフッカー堀江を一時退場で欠いた時間帯もあった。そんな苦しい状況でこそ、姫野は真骨頂を発揮する。9点リードの後半開始直後、自陣深くで相手ボールのラインアウトとなった。日本は1人少ない14人で守る。サモアが連続攻撃を仕掛ける中、姫野が密集でボールを奪う「ジャッカル」に成功し、ピンチ脱出。両拳を握って派手に雄たけびを上げた。
 その後、敵陣でPKを得ると、蹴り出してのラインアウトを選択。「自分たちが、かなり体力的に優位に立っていたところがあった」。ボールを確保してから大型FWを相手にモールでの勝負を挑み、一気にプッシュ。最後は姫野が自らインゴールに押さえてリードを広げた。
 的確に状況を読み、勝利に貢献した。「自分への評価は皆さんにしてもらえればいい。僕はチームが勝てればそれでいい」。8強進出を懸けたアルゼンチンとの決戦でも、リーダーにふさわしい活躍でチームを導くつもりだ。

レメキ 攻守で主役の輝き
 ボールを持てば自在に突破。ハイパントをミスなく処理し、効果的なキックで陣地を取り戻す。FBレメキがグラウンドを縦横無尽に走り回り、勝利に貢献。プレーヤーオブザマッチに輝いたのも当然だった。
 日本が前半にスクラムを起点に奪った2本のトライは、いずれもレメキが突破口を開いて生まれた。「今、調子がいいから」とさらり。ロングキックで相手の大型FWを後ろに下げ、消耗させることにも成功。攻守に抜群の働きを見せた。
 6月に始まった代表合宿には代表候補選手として参加。W杯前の実戦では、出場機会は全くなかった。それでも練習では主力相手に全力でプレー。自身と同じ「候補」の立場の若手に「自分たちにとっては、ここがアピール」と声を掛けながら汗を流した。
 諦めない姿勢は無駄にはならなかった。本職のWTBだけではなく、SOやFBもできる万能ぶりが評価され、W杯メンバー入り。そしてチリとの初戦で途中出場。イングランドとの第2戦では序盤で負傷退場したFBマシレワに急きょ代わり、安定したプレーを披露した。試合ごとに評価を高め、ついにサモア戦で先発出場。大舞台でまばゆい輝きを放った。
 「きつい合宿をやってコンディションもいい。何よりラグビーを楽しんでいる」。W杯は2度目。7人制日本代表として2016年リオデジャネイロ五輪も経験している。頼もしい34歳は、もはやチームに欠かせない存在だ。

流欠場 控えの斎藤が躍動
 急きょ袖を通すことになった背番号「9」のジャージーで躍動した。主軸のSH流が練習中にふくらはぎを痛め、代役として斎藤がW杯初先発。堂々とした球さばきで勝利に導き「(流)大さんの分も背負ってプレーするという気持ちでいた。自信を持ってやり切れた」と充実感を漂わせた。
 前半32分、敵陣深くに攻め込んだFBレメキに駆け寄り、ギアを上げた。持ち味の素早い球出しでテンポの良い攻撃を演出し、二つ目のトライを呼び込んだ。ジョセフ・ヘッドコーチは「素晴らしいプレーをしてくれた」とたたえた。
 日本でW杯が開催された4年前は早大4年。分かってはいながらも、代表メンバーから漏れると「本気で目指していなかったな」と悔いが残った。卒業後は「一番成長できる」と、当時も日本の主力だった流と同じチームにあえて進み、ライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)してきた。
 グラウンド外では兄のように慕う流からは「勝たせてこいよ」との激励を受け、力に変えた。勝負のアルゼンチン戦へ「必ず勝ちたい」と短い言葉に気合をみなぎらせた。

アルゼンチンと残り1枠の争い
 1次リーグD組はイングランドの1位通過が決まり、ベスト8による決勝トーナメントに進出できる残り1枠は、最終戦で対戦する日本とアルゼンチンが争うことになりそうだ。日本は勝ち点9で最終戦に臨む。アルゼンチンは同4だが2試合を残す。30日に対戦するチリとは実力差が大きく、勝利する可能性が高い。ボーナス点を獲得するかによって、勝ち点8か9で日本戦を迎えることになる。
 勝ち点9で並んで対戦した場合は勝てば文句なしで突破。引き分けは4トライ以上のボーナス点の有無が影響し、勝ち点が同じになれば総得失点差などで決まる。アルゼンチンが勝ち点8のケースでは、日本がボーナス点を与えずに引き分けたりしても突破となる。

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