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テーマ : 富士市

「アウティング」禁止条例が増加 富士市など26自治体、3年で5倍に

 性的指向や性自認を本人の同意なく暴露する「アウティング」の禁止に関し、10月1日時点で少なくとも12都府県で26自治体が条例で明記し、3年間で約5倍に増えたことが22日、地方自治研究機構(東京)と各自治体への取材で分かった。6月成立のLGBTなど性的少数者への理解増進法には禁止が明記されておらず、国に先んじて人権擁護に取り組む自治体が増加している現状が浮き彫りになった。

アウティング禁止を明記した条例がある自治体
アウティング禁止を明記した条例がある自治体

 アウティングは重大な人権侵害に当たり、2020年6月施行の女性活躍・ハラスメント規制法の指針でパワハラの一類型に規定された。今年7月には労災認定の事例も明らかになったが、同法の規制は職場に限定される。
 地方自治研究機構は今年9月までに、47都道府県と1741市区町村を対象に「性的指向」や「性自認」などの言葉を条文に含む条例を抽出し、アウティングに関する規定の有無を調査。共同通信は禁止を明記している自治体に具体的な内容を取材し、20年の5自治体から、26自治体に増えていることが分かった。
 県レベルで条例があるのは埼玉県と三重県。都道府県別では東京の9市区が最多で、続く兵庫が3市だった。いずれも罰則はないが、本人への公表(カミングアウト)の強制も併せて禁じ、被害を受けた場合の救済申し立ての仕組みを設けた条例もあった。
 15年に一橋大法科大学院の学生が同性愛を暴露された後、転落死し社会問題化。キャンパスのある東京都国立市は18年4月、アウティング禁止を明記した条例を全国で初めて施行した。
 三重県の条例(21年4月施行)は「性の多様性や多様な生き方を認め合う社会の実現」を目的とし、性的指向や性自認に関し「本人の意に反して正当な理由なく暴露してはならない」と明記。埼玉県条例(22年7月施行)は性の在り方を「男女二つの枠組みではなく連続的かつ多様」とし「アウティングをしてはならない」と定めている。
 26自治体のほかにも「性的指向を理由とした人権侵害」などを禁止している条例もあるが、今回の調査はアウティング行為の禁止を明記している自治体を対象とした。沖縄県は条例の指針で「人権侵害」の具体例としてアウティングを挙げている。

 LGBT法連合会の神谷悠一事務局長の話 アウティングは職場ではハラスメントとして防止が義務付けられたが、それ以外の学校や医療などの場では法整備がなく、何が該当するのかや、具体的な対応についてはまだ理解が広がっていない。条例で禁止を明示することは重要で、周知や予防、被害を受けた場合の救済にもつながりやすい。当事者の周囲の環境が差別的であればあるほど、アウティングの影響は甚大となる。被害が起きないよう各分野でさらに啓発が必要だ。当事者にカミングアウトされたら、まずは誰にどこまで話していいのか本人に確認することが基本。悩んだら守秘義務を順守する専門窓口に相談してほしい。

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