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テーマ : 熱海市

観光振興と市民生活 活気と快適さ 両立を【課題の現場 迫る熱海市長選㊦】

 「大切なお子さん、彼女、奥さんの手を離さずに、ゆっくりと前へ進んでください」。熱海海上花火大会が開催された8月26日夜、JR熱海駅前に県警の「DJポリス」のアナウンスが響いた。改札前に殺到する観光客に、熱海市や観光関係団体の職員らも一緒になって懸命に声を張り上げた。

花火大会の見物客が殺到したJR熱海駅前=8月26日、熱海市
花火大会の見物客が殺到したJR熱海駅前=8月26日、熱海市

 花火大会は8月に5回開催し、主催団体によると毎回1万5千~1万8千人が訪れた。終了後の駅前はごった返し、ロータリーに人があふれ出ることもあったが、関係機関の連携で何とか乗り切った。
 リーマン・ショック後の低迷を脱し、2015年から5年連続で年間宿泊客数が300万人を突破して「V字回復」と称賛された同市。だが、新型コロナウイルス禍で20年は185万人、伊豆山の土石流災害が重なった21年は153万人に激減した。市によると、この2年の経済損失は1009億円超に上った。
 我慢を重ねてきた観光事業者にとって「復活の兆し」が見えた今夏。熱海温泉ホテル旅館協同組合の森田金清理事長(54)は「宿によって差はあるが、全体的にコロナ禍前の水準に戻りつつある」と安堵(あんど)する一方、想定を超えた花火大会の混雑には困惑した。「行動制限の反動か、3年前まではあれほど駅に人が殺到するようなことはなかった。来年以降も同じ状況が続くようであれば、見物の有料制や事前登録制など何らかの対策が必要になってくるかもしれない」と思案する。
 平地が狭く、交通網も限られる同市。特に繁忙期は人も車も市中心部に集中しやすい。繁華街の路地裏には、観光客が放置したとみられるごみも散見される。市中心部の町内会長の一人は「観光客が来てくれるのはありがたいが、交通渋滞で市民生活に影響が出ている。結果的に混雑して不便な街というイメージが観光客に定着しかねない」と懸念する。
 市は観光地としての競争力を高めるために、DMO(観光地づくり法人)の設立や観光財源の確保に向けた宿泊税の導入を検討している。観光で地域経済が成り立っているといっても過言ではない同市にとって、来遊客の満足度を高める施策は重要だが、同時に快適な市民生活を両立させることが求められている。
 (熱海支局・豊竹喬が担当しました)

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