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テーマ : 御殿場市

静岡人インタビュー「この人」 江戸時代の巡礼道をスケッチで記録する美術家 さとうなつみさん(御殿場市)

 大中寺(沼津市)の下山光順副住職と文筆家平田博満さん(函南町)と、駿河と伊豆をまたぐ江戸時代の巡礼道「駿河伊豆両国横道三十三観音霊場」を歩き、絵と文章で記録するアートプロジェクト「YOKODO33」に取り組んでいる。31歳。

さとうなつみさん
さとうなつみさん

 -プロジェクトの概要は。
 「光順さんの先達で、2021年から3年かけて札所33カ所を歩いている。すでに18番まで巡礼し、三島市から沼津市に至る札所1から11番の絵を12月に寺で展示した。四国のお遍路とは違い、横道に関する記録はほとんど残っていない。巡礼中の出来事や感じたことについて、絵のキャプションや刊行物の文章を平田さんが担当している」
 -どのように描いたのか。
 「最初は門構えや風景を描いたが、人が祈った跡をたどっていくうちに描く対象が物から空間に変化し、石像に出会った時の気持ちを思い出しながら描くようになった。それぞれの内省のきっかけになるといい」
 -歩きながら感じたことは。
 「現代の私たちは困り事があると、まずは病院に行ったりネット検索したりするが、昔の人は祈りの旅に出ることで困難をかみしめるしかなかったことに気づいた。道が変化して道祖神だけが残っても、人の苦しみは消えない。私たちは、内省の時間さえも知らず知らずのうちに手放しているのかもしれない」
 -今後の制作の展開は。
 「学生時代から、草木や髪などの有機物を使ったインスタレーションを制作している。今回の巡礼で、草木を人間と同じ心あるものとして捉える仏教の言葉『草木国土悉皆(しっかい)成仏』を2人から教わり、しっくりきた。来年はスケッチと現代美術のアプローチを組み合わせて、巡礼の過程を記録したい」
 (東部総局・菊地真生)

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