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テーマ : 御殿場市

激減危機の小山町水かけ菜漬け「来期も維持できそう」 完全許可制、補助金奏功

 3月に入り、御殿場市と小山町の特産品「水かけ菜漬け」が生産シーズンの最終盤を迎えている。食品衛生法改正で6月以降は漬物製造業が完全許可制になるため、来期以降の製造者の激減が危惧されたが、県御殿場保健所によると、両市町の事業継続補助金制度の創設などが功を奏し、約70件が営業許可を受けた(4日現在)。生産関係者からは「来期も一定の販売量は維持できそうだ」との声が聞かれる。

「早春の味」として親しまれる水かけ菜を摘み取る子どもら=2月中旬、小山町
「早春の味」として親しまれる水かけ菜を摘み取る子どもら=2月中旬、小山町
水かけ菜漬けの製造などで利用できる農産物加工センターの洗い場。施設内は窓の網戸設置や床の補修など改修を行った=3月4日、御殿場市ぐみ沢
水かけ菜漬けの製造などで利用できる農産物加工センターの洗い場。施設内は窓の網戸設置や床の補修など改修を行った=3月4日、御殿場市ぐみ沢
「早春の味」として親しまれる水かけ菜を摘み取る子どもら=2月中旬、小山町
水かけ菜漬けの製造などで利用できる農産物加工センターの洗い場。施設内は窓の網戸設置や床の補修など改修を行った=3月4日、御殿場市ぐみ沢

 改正法は2021年6月の施行で、今年5月に猶予期間が終わる。製造業を継続するには、営業用の製造施設を設け、水道を手洗い用と器具洗浄用に分けるなどして保健所の営業許可を得る必要がある。水かけ菜は米の裏作で、米農家が農作業小屋の一角などで漬け込む場合が多く、高齢化や後継者不足にも悩む個人製造業者にとって継続コストは重い。
 対応策として、御殿場市と小山町は事業継続に向けた資機材の購入や設置、施設改修費の4分の3を助成する(上限100万円)。両市町によると、期限までに計70件の申請があった。JAふじ伊豆御殿場地区本部は、設備投資が難しい個人農家のために農産物加工センターに共同の製造環境を整備。営業許可取得には施設ごとに食品衛生責任者を定める規定もあり、県食品衛生協会は23年12月に養成講座を同市で初開催した。
 「補助金がなかったら多くの生産者が事業継続を諦めていた」と、御殿場小山水かけ菜生産者組合の鈴木平作組合長(73)は振り返る。改正法で許可が必要になるのは水かけ菜漬けを販売する場合で、農家が自ら生産して家族内で消費する分には影響しないが、「富士山の水の恵みの象徴で、昔ながらの特産品。多くの人が触れられる環境を残さなくては」と話す。
 県御殿場保健所によると、事前の調査などで両市町での営業許可取得件数は100件程度になるとの見込みだった。現状は予想より少ないが、「危機的状況から70件まで継続の動きが広がったとの見方もできる」と担当者は語る。鈴木組合長は「一部で補助金の申請が間に合わなかった人などもいたと聞く。来期以降の支援も検討してもらえたらありがたい」と期待する。
 (御殿場支局・塩谷将広)

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