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テーマ : 御殿場市

「光届ける架け橋に」アイバンク運動啓発奮起 静岡県北駿地域LC

 角膜移植により視力を回復できる患者のため、死後の献眼を呼びかけるアイバンク運動。静岡県は全国有数の献眼実績を誇るが、近年は新型コロナの影響や認知度の低下などにより提供者が減少傾向にある。「コロナ後の社会でもう一度、献眼の意義を広めたい」。国内でも特に運動が盛んな北駿地域では、ライオンズクラブ(LC)の会員らが啓発や支援活動に奮起する。

献眼者遺族に対する感謝状の伝達=12月初旬、小山町
献眼者遺族に対する感謝状の伝達=12月初旬、小山町
小山町の広報誌「広報おやま」の10月号に掲載された献眼の啓発記事
小山町の広報誌「広報おやま」の10月号に掲載された献眼の啓発記事
献眼者遺族に対する感謝状の伝達=12月初旬、小山町
小山町の広報誌「広報おやま」の10月号に掲載された献眼の啓発記事

コロナ後「意義広めたい」  「自分たちは、目が見えない人に光を届ける架け橋役」と語るのは、県アイバンク事務局に代わり、小山町内の受け付けを担う小山LCアイバンク委員長の天野伸春さん(75)。同LCは1970年からアイバンク運動に取り組み、全国のLC中で最多となる累計1838人(2023年11月現在)の献眼に対応してきた。正会員25人の高齢化が進む中でも24時間体制で電話を受け、大学病院への摘出手術の依頼や献眼者宅への医師の案内、書類作成の手伝いなどを続けている。
 県内の献眼者数は1996年度の224人をピークに減少し、22年度は77人だった。同町でも累計1500人の節目を突破した14年度の72人から減少傾向で、22年度は29人。一時は30%を超えた同町の献眼率も同年度は約11%だった。天野さんは「長年の積み重ねで町民の献眼意識は高かったが、世代交代が進み認知度が落ちてきた」と話す。遺体から眼球を摘出する非常にデリケートな側面もあるため、「多様な考えが尊重される時代の流れも、献眼率低下に関係しているのではないか」との声もある。
 同LCは善意の輪を広げるため、本年度は町の広報誌に献眼記事を掲載するなど新たな取り組みを始め、葬儀業者との連携の強化にも努める。22年度に26人の献眼があった御殿場市の御殿場LCも、累計献眼者が800人を超えた成果を共有し、活動推進を誓う。
 沼津市からアイバンク運動を全国に広めた故勧山弘さんの影響などから、県内は東部で運動が盛ん。公益財団法人県アイバンクによると、献眼者は例年東部が8割を占め、特に北駿が多い。担当者は「角膜不足は続いている。中、西部にも効果が波及して協力が増えればありがたい」と願う。

再生医療発達も「移植必要」 静岡県内の待機患者70人  県アイバンクによると、同法人が把握している角膜の提供を待つ県内の患者は10月末現在で約70人。全国では日本アイバンク協会のデータで約2000人。近年は再生医療が発達しているものの、「再生の可能性があるのは角膜の一部で、治療できる疾患は限定的。現在も角膜移植に頼っているのが現状」と献眼の必要性を訴える。提供者の疾患や角膜の状態によっては献眼ができない場合があるものの、後期高齢者の角膜も活用できるといい、「100歳以上の方の角膜が若者に光をもたらした例もある。年齢問わず協力をお願いしたい」と呼びかける。  (御殿場支局・塩谷将広)

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