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テーマ : 御殿場市

大自在(2月28日)水かけ菜漬け

 転勤で各地を巡る楽しみの一つが、その土地ならではの味を知ること。記者の場合、取材する機会もあり、気候風土など背景にあるストーリーに触れるとなおさら親しみが増す。御殿場支局経験者としては、何といっても北駿の「早春の味」、水かけ菜漬けだ。
 その水かけ菜漬けが岐路に立たされている。食品衛生法の改正で、漬物製造業が許可制となるためだ。経過措置期間は5月まで。6月以降も製造を続けるためには、専用の製造室を用意し、手洗い用と器具洗浄用に別々の洗い台を設ける必要がある。
 水かけ菜は米の裏作で、米農家が農作業小屋の一角などで漬け込み作業をするケースが多い。個人製造業者にとっては、継続のためのコスト負担が重くのしかかる。
 この事態に御殿場市と小山町は施設改修や資機材導入のための助成金制度を設け、両市町合わせて70件ほどの利用申し出があった。だが、高齢化や後継者難などもあり、法改正をきっかけに廃業する人も一定数いるとみられる。
 農協は農産物の加工センターを改修し、水かけ菜漬け製造のために共同利用できる環境を整えた。個人での設備投資は難しいが継続への意欲があるという人は、活用を前向きに考えてほしい。
 水かけ菜漬けは辛味と甘味のバランスが絶妙な独特の風味と、シャキシャキとした食感が魅力。ご飯のお供はもちろん、細かく刻んでチャーハンやペペロンチーノに入れてもおいしい。水かけ菜の名は、富士山の伏流水をかけ流して保温し、栽培することに由来するという。次代に残したい食文化だ。

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