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富士登山ルート3776 海抜ゼロから目指せ山頂【しずおかアウトドアファン】

 海抜ゼロから3776メートルの山頂へ-。数ある富士登山道の中でもひと味違う達成感が味わえると評判なのが、富士市が設定している「富士山登山ルート3776」だ。同市の海岸付近を出発し、全長約42キロに及ぶ長距離ルートで日本最高峰を目指した挑戦者に醍醐味[だいごみ]などを聞いた。

富士山登山ルート3776で登頂を果たしたグループ=16日、同山剣ケ峰
富士山登山ルート3776で登頂を果たしたグループ=16日、同山剣ケ峰
富士山登山ルート3776の概略図
富士山登山ルート3776の概略図
山本和子さん
山本和子さん
西川卯一さん
西川卯一さん
富士山登山ルート3776で登頂を果たしたグループ=16日、同山剣ケ峰
富士山登山ルート3776の概略図
山本和子さん
西川卯一さん


 挑戦者「達成感は格別」  静岡側の山開き(10日)から初の連休となった16日。富士山最高地点の剣ケ峰にある石柱の前は、多くの登山者でにぎわった。中には、ザックなどにルート3776の挑戦者であることを示すゼッケンを着けた人の姿もちらほら。到着すると記念撮影をして喜びをかみしめた。

 トレイルランニングも楽しむ仲間4人で2日間かけてゴールした会社員橋本学さん(48)=神奈川県鎌倉市=は、昨年に続き2度目のルート3776挑戦で初めての達成。「森林限界を抜けて一気に視界が開けた時は感動した。5合目から登るのに比べ、達成感は格別だった」と充実した表情を浮かべた。
 同ルートは、登山者が無事を祈って浜の石を積んだとされる「富士塚」(富士市鈴川西町)、展望台から富士山や田子の浦港などを見渡せる「ふじのくに田子の浦みなと公園」(同市前田)の2カ所のうちいずれかを「起点」として選ぶ。「海抜ゼロ」にちなみ、付近の海岸で海水に触れてからスタートを切る人も多いという。
 出発してしばらくは平らな市街地が続く。東海道の名勝として知られる「左富士」や吉原商店街を通ると、徐々に坂道へ。人家が減り、道の両脇に木が目立つようになる。富士山自然休養林に入ると、本格的に登山道が始まり次第に高度が上がる。森を抜けると横手に宝永山を望む宝永第一火口縁に着く。
 富士宮口6合目で5合目からの登山道と合流すれば、後は一般的なルートと同じだ。眼下に雲海や駿河湾などを眺め、ごつごつとした岩場や砂利を踏みしめて頂上に向かう。ゴールは日本最高地点の剣ケ峰だ。挑戦者の多くは2~4日間程度の日程で達成している。
 同ルートは観光誘客の促進のため、富士市が2015年に設定した。22年は774人が挑戦し、過去最多の619人が達成した。同市交流観光課の窪田真大さん(23)は「このルートでしか楽しめないオンリーワンの魅力が満載。記念すべき富士山の世界遺産登録10周年の年にぜひ挑戦してみてほしい」と話している。
 (生活報道部・草茅出)

地域住民も おもてなし  富士山登山ルート3776は、一般的な5合目からの登山では機会が限られる地域住民との交流も魅力。長年にわたり、登山者のもてなしに携わる2人を訪ね、思いを聞いた。
 富士市の推奨ルートに近い同市大淵の農家民宿「やまぼうし」。以前は花木生産を手がけていたこともあって、広い庭は季節ごとにさまざまな花が咲き誇る。宿を切り盛りする山本正子さん(74)=写真上=が振る舞う有機栽培の野菜を使ったメニューが評判だ。
 8年ほど前に開業してから口コミで評判が広まり、今では海外からも富士登山者が訪れて英気を養う。山本さんは「多くの人に美しい富士山を見てほしい。今後も、うちに泊まって良かったと思っていただけるようなサービスを続けたい」と言葉に力を込める。
 起点にほど近い吉原商店街の一角にある土産物店「東海道表富士」(同市吉原)には、富士山関連のグッズがところ狭しと並ぶ。店主の西川卯一さん(48)=同下=は、登山ガイドとして多くの登山者を富士山に案内してきた。同山に続く信仰の道「村山古道」にも精通する。
 ルート3776の面白さは山頂を極めるだけでなく、森林や歴史、文化などいろいろな楽しみ方ができる点という。「海抜ゼロからの富士山も一つの伝統として定着し始めている。地元の子どもたちにも足を運んでもらい、地域で富士山の素晴らしさを受け継いでいってほしい」と願う。

挑戦者は計画書提出  富士山登山ルート3776に挑戦する場合は、同ルート公式ホームページなどで入手した計画書を事前に富士市に提出する。併せてスタンプラリーシートで道中のチェックポイント4カ所でスタンプを押し、山頂で撮影した記念写真を添えて送れば達成認定となる。起点からゴールまで、連続した日程でなくてもよい。両方を提出した人には市から達成証とバッジを贈る。2023年は、富士山の世界遺産登録10周年を記念したデザインのバッジを数量限定で用意している。
 市交流観光課によると、22年の挑戦者の男女別は男性が約8割。年代別は10歳未満から80代以上までと幅広い。居住地は本県のほか、東京都や神奈川、愛知両県などが多い。市はゆとりを持った計画の立案、万全な装備や登山保険への加入など「挑戦者の心得7カ条」を掲げ、安全な登山を呼びかけている。

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