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難病一人で悩まないで SLE患者・家族会「浜松S―FA」設立20年

 発熱や全身の倦怠(けんたい)感などを引き起こす原因不明の自己免疫疾患「全身性エリテマトーデス(SLE)」について、県西部などの患者や家族らでつくる「浜松S―FA(エスファ)」が今春、設立20周年を迎えた。当事者同士の交流会や専門医らによる講演を続け、難病と向き合いながら生きる人たちの支えになっている。6月4日には浜松市内で記念式典を開く。会員らは「一人で抱え込んで悩まず、生活を有意義にしていきたい」と活動に励む。

記念式典に向け、打ち合わせをする池田初美さん(左)と寺島美好さん。難病への理解普及と当事者の励ましへ力を注ぐ=5月中旬、浜松市中区
記念式典に向け、打ち合わせをする池田初美さん(左)と寺島美好さん。難病への理解普及と当事者の励ましへ力を注ぐ=5月中旬、浜松市中区

 「あちこちに関節痛のような痛みがあり、ベッドから起き上がるのも苦痛だった」。同会に初期から加わる中心メンバーで事務局を務める同市中区の池田初美さん(58)は20年前の発症時を思い起こす。自宅近くの診療所ではどのような病気か分からず、痛みが生じてから2カ月ほどたって総合病院でSLEと診断を受けた。「子どもはまだ小学生だったし、どうなるかと思った」。ステロイド剤などを投与するため、約2カ月間入院した。退院後も、数カ月に1度の通院と投薬治療を続けた。
 そんな折に、同会の存在を知った。自分より高齢だったり、車いす生活だったりする人たちが前向きに暮らしていた。「話を聞いてもらえて安心できた。病気と10年以上向き合いながら、明るくいられる人たちに救われた」と感謝する。
 袋井市の寺島美好さん(71)も会に励まされた一人。妻(74)が約20年前からSLEを患い、自身も思い悩んだが、今は話を聞く側に立っている。
 「娘が発症して家にこもりがちになってしまった」と涙ながらに苦しみを告白する夫婦や、「病気のために疲れやすく、職場で不当な扱いを受けている」という患者の声に耳を傾けてきた。「悩みを打ち明けることが安心感につながる」と交流の意義を強調する。
 勉強会と交流会で年に2回ほど集まるエスファの会員は2000年代半ばに60人ほどだったが、現在は20~70代の30人程度にとどまる。それでも池田さんらは30代の会員から「会が存続することで医師からの正確な情報が集まる」などと励まされ、活動の活発化に注力する。昨年からはSNSでの情報発信も始めた。
 池田さんは「病気のことを世の中に正しく知ってほしい。発症している人には1人じゃないんだよと伝えたい」と声に力を込める。

 <メモ>全身性エリテマトーデス 指定難病で、発熱や全身の倦怠(けんたい)感、関節の痛みや皮膚への発疹のほか、臓器に炎症を起こすこともある難病。20~40代の女性で発症することが多く、全国では6万人から10万人の患者がいると推定されている。県内の患者数は約1700人。疲れやすさが残り、職場では怠けていると誤解されたり、顔に発疹ができることで若年者らにとっては外出をためらう要因になったりする。ステロイド剤や免疫抑制剤によって症状を抑える。

 6月4日に記念式典
 浜松S―FAは4日午後2時から、設立20周年記念式典を浜松市中区のアクトシティ浜松研修交流センターで開く。御前崎総合病院リウマチセンターの大橋弘幸センター長が、全身性エリテマトーデスの治療の最新動向について講演する。会の活動を振り返るパネルや治療などの助成制度を解説する資料も展示する。式典はオンラインでも配信する。問い合わせは浜松S―FA事務局<電080(8710)2188>へ。

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