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化学肥料削減へ新資材 西部3JA、普及に力

 遠州中央、とぴあ浜松、みっかびの県西部3JAが、スタートアップ企業や県外JAなどと連携し、農作物の収穫量を増やす低環境負荷の農業資材「バイオスティミュラント(BS、生産刺激剤)」の普及に向けた取り組みに乗り出した。原料をほぼ輸入に頼り、価格が高騰している化学肥料の使用を減らすことで生産者の負担を軽減し、農業の脱炭素化にもつなげる。

植えたばかりの白ネギの苗にバイオスティミュラントを散布する生産者=9月下旬、磐田市小島
植えたばかりの白ネギの苗にバイオスティミュラントを散布する生産者=9月下旬、磐田市小島


 3JAは9月上旬、農業分野の課題解決に取り組むスタートアップ「AGRI SMILE(アグリスマイル、東京都)」の呼びかけで設立された「脱炭素地域づくり協議会」に参加した。参加団体は手分けし、廃棄されてきた農産物の残さや非可食部を原料にしたBSの開発や効果の検証などを進めている。
 JA遠州中央は同月下旬、磐田市小島の白ネギ畑で、BSを使った試験栽培を始めた。耕作面積5アールのうち1・2アールで化学肥料の使用量を20%減らし、植えたばかりの苗にBSを散布した。通常通りの栽培と比較し、収量や品質などの変化を分析する。袋井市の茶園でもBSを散布して検証を進めている。営農企画課の松永康弘課長は「生産者に使ってもらうには効果を明確にしなければならない。生産物の残さなどをBSとして地域内で再資源化できれば、循環型農業の実現につながる」と期待する。
 JAみっかびも、ミカンの減肥試験に取り組んでいる。果樹のため、すぐに効果は出ないとみているが、数年かけて樹勢などへの影響を調べる。協議会は各地での実証データを集め、生産現場にBSの有効性をわかりやすく発信する方針。
 JAとぴあ浜松は、農業の新たな収入源として、BS使用で削減した分の温室効果ガス排出権をカーボンクレジットとして企業に販売する仕組みの研究を担う。斉藤直司常務理事は「農業経営の厳しさが増す中、地域農業を将来にわたって持続可能にしていくため、組合員の所得向上を目指したい」と意欲を示す。
 (磐田支局・八木敬介)

 <メモ>農林水産省は環境負荷の少ない農業への転換を図る「みどりの食料システム戦略」で、原料に化石燃料を使用する化学肥料を2050年までに16年比で30%削減する目標を掲げる。農作物本来の力を引き出して生育を促し、気候変動などによるストレスを緩和する効果があるとされるバイオスティミュラント(BS)は、同戦略で革新的農業技術として示されている。「AGRI SMILE」社によると、BSは海藻や微生物、ミネラルなど身近な自然由来の素材で開発できる。海外では欧州を中心に活用が広がっていて、国内でも参入する企業が増えている。世界市場は30年に7500億円規模になるとの見通しがあるという。

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