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モンゴルの恩人 26年ぶり再会へ 吉川さん(袋井) 遭難時救われた感謝伝えたい 写真手がかり、思い結実

 袋井市の会社員吉川弘行さん(68)が15日、26年前にモンゴルで遭難した際に助けてくれた現地住民との再会を果たす。名前さえ判然とせず、手がかりは写真のみ。手を差し伸べてくれた命の恩人に会ってお礼が言いたい-。吉川さんの一念は国境を越え、2人の縁を再び結び付けた。

26年前の写真を手に再会への思いを語る吉川さん=袋井市内
26年前の写真を手に再会への思いを語る吉川さん=袋井市内


 「内心もう会えないかもって思ってた。(再会は)奇跡だよなあ」。1枚の写真を眺め、感慨深げに語る。写っている人物は異国の地で吉川さんを救ったオトゴンジャルガルさん(52)とその家族。再会が決まってから日に日に思いが増している。「当時のことや近況、話したいことがたくさんある。何だかそわそわする」と笑う。
 1997年7月、吉川さんはモンゴルで開かれたバイクの国際レース「ラリーレイドモンゴル」に出場した。首都ウランバートルを発着点に約6千キロを10日かけて1周する競技で、数十キロごとに設けられた目印を頼りに砂漠や草原を走る。初日、2日目までは順調に進めた。ところが3日目に暗転した。計器類の誤作動でコースを逸脱。気付いた時には既に遅く、あてもなく氷点下の山岳地帯をさまよった。
 「遭難するかもしれない」。夜も更け、焦りが募る中、一軒家を見つけた。身ぶり手ぶりで助けを求めると住人は快く迎え入れ、温かい食事も提供してくれた。その住人こそ「オトゴンさん」だった。一夜明け、謝礼を渡そうとしたが、決して受け取らなかった。
 吉川さんは無事に帰国できたが、感謝の思いを十分伝えられなかったことを長く悔いていた。ずっと写真を持ち歩き、恩人の所在を探したが見つけられなかった。
 転機は昨年8月。伊豆の国市で開かれたモンゴルの文化交流イベントに参加し、市職員から通訳を務めていたムンフジャルガルさん(43)を紹介された。つてをたどり、日本人を助けたことがあると話す男性に行き着いた。オトゴンさんだとすぐに分かった。
 吉川さんは9日間現地に滞在し、オトゴンさんに3日目に再会する予定。対面したら、当時は話せなかったモンゴル語でこう伝えるつもりだ。「バヤルララー(ありがとう)」。
 (仲瀬駿介)

 

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