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生産性上げない継続雇用疑問/企業とミスマッチ シニア雇用 年齢で判断されるのはあり?⑥ キュレーター/読者の意見 【賛否万論】

県内の特別養護老人ホームで働く介護助手の70代女性
県内の特別養護老人ホームで働く介護助手の70代女性
求人票に目を通すシニア求職者=6月、静岡市駿河区のハローワーク静岡
求人票に目を通すシニア求職者=6月、静岡市駿河区のハローワーク静岡
県内の特別養護老人ホームで働く介護助手の70代女性
求人票に目を通すシニア求職者=6月、静岡市駿河区のハローワーク静岡

 シニアが年齢によって雇用の採否を判断されることに関しては、年齢だけで判断してほしくないシニアに理解を示す意見と、高齢者を敬遠する企業側を擁護する見解に割れました。ただ、いずれにしてもシニアと企業の双方が対応を変えることでミスマッチを解消する必要がありそうです。キュレーターや読者の意見の紹介は今回が最後です。シニア雇用の問題については背景にある年金の課題も含めて引き続き取材を進め、「70歳の壁 シニア雇用を考える」として社会面などで随時掲載します。
生産性上げない継続雇用 疑問
キュレーター 江口裕司さん(三島市)


 

 

メーカーで米国勤務後、設計、製造、調達、翻訳、ISO、社内教育など多様な業務に携わり定年退職。現在、パートの傍ら、大学再入学を目指し勉強中。64歳

 経験と現実の殴り書きをご容赦願い、まずは継続雇用制度。ふに落ちない。収入を先細りさせ、嘱託という無気力化のわなに陥れ、毎年の雇用契約更改で退職を促す会社の保身制度と感じる。定年の数年前に制度申請した途端、給与は減額され、定年後の嘱託で極限まで下がる。そして雇用の再契約が毎年行われる。雇用は先延ばしだが給与も先延ばしだ。生産性の向上にコミットするのが仕事なら私は継続雇用中に仕事をしていない。自主的に業務改善もできず、なえる意欲。「嫌なら辞めて」と言わんばかりの毎年の契約更改。3年目の契約にサインする気力はなかった。生産性を上げない継続雇用制度が労使双方に有効とは思えない。

 ハローワーク通いで辛酸をなめた。内規の定年ルールで都合良く断られる。「自分の年齢と同じくらい面接受けなきゃ仕事は見つかりませんよ」。担当者のアドバイスに痛み入る。「俺ってそんなにダメ?」。21回目の面接に臨む気力はなかった。20回のダメ出しで、定年は諦念と悟った。

 ある人事責任者は採用したシニアを三つに分類する。まず、8時間を無難に過ごす「空気シニア」。害はないが存在感もない。次は、昔取ったきねづかで熱弁するが、いざとなると寡黙な「おためごかしシニア」。他者承認欲求と自己顕示欲がダブルで煙たい。そして、過去の栄光は封印し適切な助言で問題解決に導くシニア。謙虚で冷静ないぶし銀の輝きが頼りになる。タイプ別の評価は自明であろう。

 知人の経営者がホンネを吐露する。「年齢にこだわらずジョブ型雇用にしたいが、人の評価をどう見定めるか。定年までの一括護送船団方式が伝統の日本。教育制度の抜本的改革が伴わない限りその答えは出せない。使い勝手が悪い高齢者はさっさと辞めてほしい」。これが全てとは思わないが腹落ちする。

 「老人の美学」(新潮新書)で筒井康隆氏は理想のシニア像をこう語る。「視野の狭い酔狂にならぬよう思考と行為に美的価値を広め先駆的覚悟を勝ち取ろう」。難解なハイデガー思想だが、要はメメントモリ。矩[のり]を踰[こ]えない哲学者たれとの示唆と読んだ。人事採用責任者はシニアの面接にその哲学を読み取るのだろう。

「別世界」の職場 周囲の支え感謝
読者 天野智啓さん(掛川市)

 私は70歳。今は週2日、清掃の仕事をしています。四十数年勤めていた会社を65歳で退職しました。仕事をしている時は「退職したら思う存分、旅行、趣味が楽しめる」と思っていましたが、いざ仕事を失い家にいると、何か不安な気持ちになってきました。

 まだ体も動くし、短時間の仕事であればと思い、求人情報を見て電話してみましたが、「体力ありますか?」「長時間動けますか?」―。シニア募集なのに最初から雇う気のない応対でした。

 しばらく諦めていましたが、ますます不安な気持ちが強くなり、何とかしなくてはと思っている時に「ここはどう?」と妻が求人情報を差し出してくれたのが今の職場です。採用が決まり、いざ仕事をしてみると今までの仕事とは別世界で、覚えるのにとても苦労しました。

 幸いにも今月の末には5年目を迎えますが、ここまで続けてこられたのも道具の使い方、清掃の仕方、お客さまへの接し方を一からいろいろ教えてくれた仕事仲間の存在です。とても感謝しております。

 この4月に先輩の一人が年齢制限で退職しました。まだまだ体力もあり、仕事に対しての情熱もあり、とても残念です。会社としても年齢で判断するのではなく、その人のやる気、体力を見て決めてもらいたいと思います。

 私たちの年代にとって働く場は、誰かと交わりを持ち、自信を得られる、元気になる、大切な場でもあります。社会全体でこの場を作り上げていきたいものです。

面談対策 力を注いでみては
読者 大島宏幸さん(長泉町)60歳
 インタビュー記事を読んで、シニア世代への就活への助言の内容に違和感があった。人は、誰でも自分の経験を生かした業種で働きたいはずです。そのことを軽視した印象を持った。採用する企業とのミスマッチは、年齢を問わずにあると思う。70代のシニアは、就職後にどういう仕事をやるのか理解不足の面もあるだろう。だから、過去の成功体験をアピールしたくなるのだと思う。企業側も仕事の詳細を面談で説明していないから、お互いの意思疎通ができていないのではなかろうか。

 現役世代の転職は、即戦力で活躍できそうかを評価するから、どういうスキルがあるのかが大事になる。70代の再就職だと、職種も限られるだろう。任せたい作業内容も限定されると思われる。転職サイトを調べたり、シニアのための転職エージェントを活用したりすることでミスマッチが減るのかなと思う。言葉は悪いけれど、70代のシニアは、情報弱者の人が多いのかな?

 IT業界の場合、転職や個人事業主になるケースが多い。転職先や仕事を探す時、過去に一緒に仕事をした人の紹介が多いと思う。私自身の転職先は、紹介でした。昨年、個人事業主でやっている元同僚から連絡があった時、上司に話をしてちょうど良い案件があり、うまく仕事を見つけることができた。70代の雇用に必要なことは、情報収集をいかにうまくできるかではなかろうか。これができないとミスマッチは解消されないと思う。

 従業員が不足している業種は、若者が魅力を感じづらいのかな? 企業側も、長く勤務してもらう方が従業員のスキルアップになるので若い人を雇用したいのが本音だと思う。人手不足で外国人の技能実習生を雇用したけれど、うまくいかないケースもある。従業員を雇用したいけれど、誰でも良いということではないので、採用が難しいと思う。

 不採用の本当の理由を伝えるべきかは疑問です。弊社は、こういうスキルの人材を求めています。あなたは、スキルが足りませんということを伝えるのは、企業側もリスクがあると思う。今どきは、ささいなことでも気に入らなければ、SNSで発信される。企業イメージを守るためには、当たり障りのない理由を伝える方が面倒にならない。

 私は、面談者(シニア)側が就活をしっかりやる方が良いと思う。どういう職種を希望するのかや自己PRをどのように頑張るかに注力する方が良いと思う。面談がうまくいかない人は、就活のやり方が違うのではないでしょうか。シニア向けのセミナーもあるので、そういうのも利用するのも良いかと思う。

高齢者と企業 続くミスマッチ
読者 ひまじんさん(磐田市)67歳

 自分が健康でまだ働けるというのは、あくまで主観的な判断である。しかし、やはり客観的に見ると、年齢とともに体力や判断力、注意力といった労働に不可欠な能力は衰える。もちろん個人差はあると思うが…。

 先日、高齢者が交通整理をしている現場を見た。道路工事の現場で旗を振る。しかし、動きが緩慢で分かりにくい。何となく見ていて痛々しかった。

 企業側が高齢者を敬遠する理由は分からないでもない。高齢者は自分の能力を過大評価する傾向がある。よく考えれば「経験」「資格」以外に、企業側にアピールできるものがあるのだろうか。しかし、高齢者に用意される職種の多くは、経験も資格も必要としない体力勝負の単純労働である。

 高齢者の思いと企業側の要求がミスマッチを続ける以上、高齢者の不採用が続くのは仕方あるまい。生活のためやむなくという人は別だが、「暇つぶし」「ボケ防止」そんな理由で応募されても企業側が敬遠するのは当たり前だ。
次回のテーマ 「先生の残業代 どう思う」  次回のテーマは「先生の残業代 どう思う」です。公立学校教員には給与の4%が残業代として一律に支給されています。法律に基づく措置で、世間一般のように超過勤務に応じて支払われる仕組みではありません。しかし学校現場の多忙化で実態に見合わなくなり、国レベルで議論が本格化しました。働き方改革も深く関わるこの問題を考えます。(テーマは変更される場合があります)

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