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テーマ : 長泉町

新設校、校歌制定にも新風 静岡県立ふじのくに中学校、伊豆伊東高

 自校の教育理念や地域の自然・文化を織り込んだ高校や中学の校歌は、在校生のみならず卒業生にとっても心のよりどころとして機能している。社会の変容に基づいて学校の統合や新設が相次ぐ中、制定の方法や作者の人選にも新しい風が吹いている。県内の二つのケースを追った。(教育文化部・鈴木美晴、橋爪充)

弾き語りを披露するはるかぜさん=7月中旬、三島市のふじのくに中学校三島教室ふじのくに中学校、県内初の夜間中学 1期生の思いを表現
 県内初の夜間中学「県立ふじのくに中学校」の第1期生が校歌づくりに取り組んでいる。新設校ならではの取り組みを通し、生徒が自ら何かをやり遂げる経験を積み、主体的に学ぶきっかけの一つとするのが狙い。
 三島市の同中学三島教室で7月中旬、藤枝市出身のシンガー・ソングライターはるかぜさんがギターの弾き語りで「エール」「ともだち」など4曲を披露した。同中学の校歌作成プロジェクト講師の野田忠邦さん=藤枝市立藤枝中教諭=の紹介で招き、弾き語りはオンラインで磐田市の磐田本校にも中継した。
 はるかぜさんは「他の人を理解するには、まず自分を出すことが大事。だから私は歌っている」と自身が歌にこめる思いも語った。 両教場の生徒7人は伸びやかな歌声に耳を傾けた。ベラスケス・ペレス・エリアス・エイジさんは「明るく楽しい校歌をつくりたい」と意気込みを語った。
 同中学は今年4月に開校。第1期生の10~70代の14人は6月から校歌作成を始めた。校歌の完成時期は未定だが、今後は作詞や作曲に挑戦して来年3月には発表会を実施予定。
 西田秀男校長は「校歌作成を通じて生徒たちが自分の思いを表現し、互いに関わりを深めていけたら」と期待している。

伊豆伊東高の校歌の楽譜。吹奏楽版に加え、管弦楽版も用意されている統合、4月に開校の伊豆伊東高、県内ゆかりの2人に依頼

 あれは 光る海だ
 透明な糸を編んで 夢が満ちてゆく
 やわらかく呼吸する 大室のやまなみ
 紺碧の空 泳ぐ惑星 砂を撫でる手のひら
 すべてを反射する水になりたい
 (伊豆伊東高校歌の冒頭部分)

 伊東高、伊東高城ケ崎分校、伊東商高の統合により今年4月に開校した伊豆伊東高(伊東市)の校歌は、多彩な修辞をちりばめた歌詞が特徴だ。2020年に第25回中原中也賞に選ばれ、21年の「しずおか連詩の会」に参加した20代の詩人水沢なおさん(長泉町出身)が手がけた。作曲は打楽器奏者で作曲家の杉浦邦弘さん(旧清水市出身)。広がりのあるおおらかなメロディーが出来上がった。
 伊豆伊東高の池田将章校長は「伊東の魅力を再認識できる内容。明るく歌いやすい曲調で、新鮮な響きを感じた」と話す。22年4月に伊東商高の校長に就任。制定作業が本格化した。伊東高の後藤昇太校長(当時)ら開校準備委員会のメンバーと協議し、12月までの校歌完成という工程を決めた。作詞作曲は県内ゆかりの人物で人選し、5月上旬に水沢さんと杉浦さんに依頼した。
 23年4月6日の開校式には作詞作曲の2人を招き、生徒たちが完成したばかりの校歌を斉唱した。池田校長は「新しい学校への前向きな気持ちが生まれた」と効果を強調した。

 <メモ>県内の公立高校の校歌を最も多く手がけている作曲家は戦前の国民歌謡「海ゆかば」などで知られる信時潔氏。沼津西、清水東、島田、浜松工など10校に名前がある。
 小山、藤枝西の團伊玖磨氏、吉原工の芥川也寸志氏など大物作曲家の名が目立つ一方、教員による校歌も多い。浜松北などで校長を務めた渡瀬祥光さんは富士東、袋井、浜松江之島などを作曲した。磐田北などで教えた中島静さんは、同校や天竜林(現天竜)、磐田西、三ケ日(現浜松湖北)の作曲を担当した。
 近年の新設校はポピュラー音楽で活躍した音楽家が主流。2013年開校の駿河総合(静岡市駿河区)、14年開校の天竜(浜松市天竜区)は作詞に静岡市出身の歌人田中章義さん、作曲に歌手サンプラザ中野くんをそろって起用。10年開校の伊豆総合(伊豆市)はともにフォーク歌手の及川恒平さんと小室等さんに作詞作曲を依頼し、開校後には校内でライブも行った。

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