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テーマ : 長泉町

社説(10月17日)静岡県東部の企業誘致 地域を挙げて戦略的に

 静岡県東部の市町による企業誘致が活発化している。雇用確保や加速する人口減への対策を目的に、東名と新東名の両高速道を擁する利便性の高さや、首都圏と中京圏との結節点としての地理的優位性を前面に押し出す。
 「東京に近い」「交通インフラが充実」「水や森など資源が豊富」。大半の自治体がこうした地域の特徴を〝売り〟として発信している。県内の企業立地件数は2022年に52件で、地域別では東部の東駿河湾(伊豆を含む)が16件を占め、この数年漸増している。経済産業省によると、全国的に高速道のインターチェンジ(IC)と近接するエリアへ進出する傾向が強く、大半がICの約5キロ圏内だという。
 一方、自治体が企業の進出後にどのようなまちづくりに取り組み、共存していくのかを発信することは少ない。一つの企業の生産・販売拠点が生まれることで、住民が増えて店が開業したり、新たな道路が開通したりして地域が一変することもある。誘致の成功をまちづくりに生かさなくてはならない。各自治体は企業誘致に臨む中で地域の特性や課題を再認識しているはずだ。教育や福祉、医療、文化の各分野を含め戦略的に将来像を描くことが欠かせない。
 富士市では、富士山フロント工業団地への引き合いが強いという。小長井義正市長は市議会9月定例会で同市の優位性を強調し、新たな用地の整備に取り組む考えを明らかにした。同工業団地は10年ほど前から県内外の企業の需要が高く、土地の造成を重ねている。今後は税収や雇用面の効果が地域へどう波及したか見極める必要がある。
 出遅れ感の強かった沼津市は本年度から企業誘致の担当組織を改め、来年2月には両高速道に挟まれたエリアの土地利用基準を見直し自治体間競争に参戦する。同市はJRの新貨物ターミナルとの相乗効果をアピールする方針で、今後、競争激化が見込まれる。
 県外から進出してきたある企業の幹部は以前、利便性や税制面の優遇措置だけで進出先を決めるわけではないと話した。自治体間の「サービス合戦」に閉口するケースもあるという。企業はばく大な投資をして進出するからには、まちに根付きたいと考えている。自治体側は企業の情報を収集し、誘致のため足しげく通うが、地域の将来像が見えなければ、企業がその地域の一員になる決断はできない。
 大手流通業の進出がうわさされる沼津市や、企業の近隣からの転入に向け最終調整に入る長泉町など東部各地で大手や中堅企業の進出の情報が飛び交う。実現には、自治体トップが思いや夢、客観的な現状を語るなど、企業に地域の将来像を示す必要がある。

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