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テーマ : 長泉町

先生の残業代 どうあるべき?④ キュレーター/読者の意見 【賛否万論】

 授業準備、児童生徒のケア、保護者への対応、部活動の指導…。多忙化が進む公立学校の教員に関し、「定額働かせ放題」とやゆされる給与制度や働き方の見直しについて取り上げています。キュレーターや読者からの投稿によって、学校現場の過酷な実態が明らかになってきました。さまざまな仕事で働き方改革の必要性が叫ばれていて、教員だけが特別ではないという声がありますが、学校や教員の問題は社会全体で解決策を模索していくことも求められそうです。今回もキュレーターや読者の意見を紹介します。


そもそも「厳格で特殊」なのか キュレーター・杉山有希子さん(掛川市)
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杉山有希子さん
 
 イベント会社「ママバトン」代表取締役。2男1女の母。10月から現代版寺子屋イン掛川を主宰。街づくりは人づくりから、の理念で人材育成に励む。

 私はサービス業でしたが同じ職場にやりがい搾取だとか、残業代が出ないなら割に合わないなどと言う人は一人もいませんでした。私自身も、時間内に帰ろうとしたら帰られるのに、ズルズルと仕事をしていたように思うし、もっと自分の意思で動けば良かった、と思い返します。
 公立学校の先生の給料は月給+月給の4%と法律で決まっているそうです。どんなに残業をしてもしなくてもです。「教職は厳格な特殊な仕事だから」という理由だそうですが、それがそもそも疑問です。厳格な仕事、特殊な仕事は他にもたくさんありますし、先生も会社員と同じように時間外勤務手当にすれば良いです。
 非常にドライな意見ですが、先生には時間内で必要な勉学を教えてくれ、学校にいる間、子どもたちの健康を守ってくれたら私はそれでいいです。親が先生に求めるものが多すぎます。先生も親に気を使い過ぎです。
 そして、本当に変化を求めるのなら先生たちも労働組合や署名、またSNSやメディアを通して自分たちの心身の健康を自分たちで守るために動くべきではないでしょうか。こんなに長い間放置されて搾取され続けているのは、誰かの責任だけでしょうか。
 生徒は先生の状態を敏感に感じると思います。早く帰りたいのかな、お給料良くないのかな、疲れているな。高学年になれば親にもそんな風に話してきます。これでは先生のなり手が減るのも仕方ありません。
 先生に対して生徒が多すぎます。勉強が追いつかない子に目が届かない状況を改善してほしいです。国は子どもたちを、将来の国の宝として育てられるように早急に真剣に考えてほしいです。

部活動の在り方 再考を 読者・がんさん(静岡市清水区)
 教員多忙化の原因の一つに部活の指導がありますが、過去には教員の方にも問題がありました。数年前に中学校教員の吹奏楽部顧問が部活の指導で、深夜までの活動、放課後や休みにおける長時間練習が問題になりました。
 その後、市教委は部活動を厳しく指導監督するようになりました。公立中学校の部活動に関しては、生徒が部活を楽しみたいだけで大会入賞などそこまで目指していないのに、顧問教諭が夢中になってしまい自ら多忙化を招くケースがありました。公立中の教員は、この辺りを認識すべきです。
 教員は通常の業務に専念し、部活動は地域移行を進め、生徒側も本格的にプロ並みの指導を受けたいのなら、サッカーや水泳のように地域のクラブ組織やスクールまたは部活動の支援体制が整っている私学を選ぶことを考えるべきです。それに、市内で本年度、1年生が1クラスの中学校が2校生まれました。チームで行う部活動を学校単位で構成するのは無理な中学校が今後増えます。

公立校の教員が気の毒 読者・大島宏幸さん(長泉町)
 今回のインタビュー記事を読んで、公立学校の教員が気の毒だなと思った。私立学校との違いは分からないけれど、待遇が違うことは予想できる。私立は、教育の質が下がれば生徒が集まらないし、進学実績やスポーツ強豪校ならば寄付金とかで資金集めが可能だろうから、公立との格差が大きいと思う。教職員給与特別措置法が1971年制定で勤務実態と合わないとの指摘があって、政治家が放置してきたのはなぜだろうか。岸田文雄首相の「対応を検討します」なのか、文部科学省の官僚の能力が低いのか、問題を先送りしているから教員のなり手がいなくて、日本全体の教育を低下させている。7月21日付の1面記事「県内小中 教員84人不足」ということは、危機的状態だ。少子化で子どもが減っているのに教員不足とは、どういうことなのか。
 官僚が行う政策が失敗しても、誰も責任を問われないように思う。ゆとり教育は、理念は良いのだが勉強ができないという偏見だけが残ってしまった。ゆとり世代の学力が低いのかは検証されていないから真偽は分からない。だが、教員の指導力は低下していると思う。高校受験や大学受験で学校だけの勉強で合格できるとは思えない。受験生になると進学塾や予備校で受験対策をしている生徒が少なくない。BSテレ東の番組「THE名門校」で見たが、鹿児島ラサールは塾に行かなくて学校が対策してくれるようだ。公立校では、ここまでやらないだろう。
 県教職員組合の意見は、持ち時間数を減らすということだけど、それでどうにかなるとは思えない。中学は、部活動は地域のクラブへ移行させれば負担が減ると思う。私は、内田良名古屋大准教授の学校依存者の主張に賛同したい。放課後や休日の生徒のことは、保護者の責任だから、学校とは関係ないはず。児童や生徒が何らかの問題を起こすと学校にクレームが来るのは、おかしいと思う。
 7月20日付の読者のひろばへの投稿で、「学校現場 業務の引き算必要」磐田市の谷本和優さん(高校教諭)の意見を読んだ。現場の声は説得力がある。教員がやるべき作業と教員以外がやれる作業を分けるべきだと思う。教育崩壊を懸念しているが、ブラック職場になっているのだから、もう教育崩壊している。教員と県教組とで考えに乖離[かいり]があるようにも思う。
 匿名で教員からの意見が出てこないようだと、現場は、あきらめの境地だということだ。大学生は教員を目指さないから、教員不足は深刻になると思う。
 県の公立小中学校教員の非正規比率は、とりあえず低い下位10自治体に入っている。堺市は20%。文科省は教員の非正規率を公表してこなかった。不都合な真実は隠蔽[いんぺい]する体質なのだろうか。メディアもこの事実を報道していないのだから、おかしい。こういう記事を読むと、まだ隠していることがありそうだと疑ってしまう。

対価に対する嫌悪感 読者・ポカリさん(静岡市駿河区)
 約半世紀前に制定された給特法(教職員給与特別法)。教職は特殊な業務のため時間管理が難しい、とのことですが、その考え方に違和感を覚えます。自発性、創造性で行ったことに対して、なぜ対価が支払われないのか。そういったことにお金が発生することへの嫌悪感、日本人の昔ながらの考え方が潜んでいる気がします。
 教職はボランティアではありません。まだ未熟で未来ある子どもを育てるという尊い仕事です。悩み、考え、目の前の子どもたちの心と向かい合っていく、それが一定時間の延長になったとしたら、先生自身の時間を割いて行った労働です。自発性や創造性は一般企業でも求められます。教師だけが特別というのは差別ではないでしょうか。
 人手がない、忙しい、という理由で子どもの心を顧みず、大切な命や教師自身の命が犠牲になる前に、まずは早急に給特法改正が必要だと思います。

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