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テーマ : 長泉町

静岡がんセンターの「プロジェクトHOPE」10年 ゲノム解析 症例1万超に

 がんのゲノム(遺伝情報)を解析して治療法選択や医療技術開発に役立てる県立静岡がんセンターの「プロジェクトHOPE」のスタートから10年が経過した。解析した症例は1万症例を超えた。データを活用し抗がん剤の効果を調べる臨床研究を始める計画で、一貫して目標にしてきた医療現場での「患者還元」が近づいている。

プロジェクトHOPEを主導する浦上研一副所長。医療現場での患者還元が近づいている=5月、長泉町の静岡県立静岡がんセンター
プロジェクトHOPEを主導する浦上研一副所長。医療現場での患者還元が近づいている=5月、長泉町の静岡県立静岡がんセンター

 国内の倫理指針整備とゲノム配列解析機器の進化を背景に、先行する米国のゲノム医療に追い付こうと、検体検査の大手企業と共同で2014年にスタートした。同センターで手術を受けた患者からがん組織の提供を受け、複数の手法で解析して変異割合などのデータを集めている。
 これまでの成果として、蓄積したデータに基づき日本人のがんゲノムのデータベースを構築し、日本人に特化したパネル検査を開発した。がんの遺伝子変異は人種によって違いがあり、欧米人のデータを参考にしていた従来よりも的確な検査結果評価や治療法選択が可能になるという。こうした実績が評価され、20年にがんゲノム医療中核拠点病院に指定された。21年度に始まった国家プロジェクト「全ゲノム解析による患者還元体制構築研究」に参画している。
 同研究の一環で本年度、三つの臨床研究を計画中。このうち一つは、ゲノム解析によって明らかになった構造異常を持つ固形がん患者に抗がん剤の効果があるかを検証する。結果によっては抗がん剤の適用範囲拡大につながる可能性があるとされる。ゲノム解析も継続し、治療効果を予測するゲノム変化の発見などを目指す。
 ゲノム解析したデータとともに患者の診療情報を蓄積しているのもプロジェクトの特徴。今後は二つの情報を突き合わせて分析を試みる。がんの分類をより細かく、的確にできるようになると期待される。始動当初からプロジェクトを主導してきた県立静岡がんセンター研究所の浦上研一副所長(65)は「国内のゲノム医療が一気に進みデータを活用しやすくなっている。患者さんに還元できるよう研究を進めたい」と言葉に力を込める。
 (東部総局・矢嶋宏行)

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