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テーマ : 長泉町

富士山混雑対策 静岡と山梨、違い浮き彫り 識者ら「方向性の統一を」 適正利用協議会

 国や静岡、山梨の両県と地元自治体、関係団体で構成する富士山適正利用推進協議会は、富士山の混雑や弾丸登山対策として新たに取り組む入山規制などのオーバーツーリズム対策パッケージ(施策集)をまとめた。28日に長泉町で開かれた会合で了承された。課題解決のため2029年までの6シーズンに集中的に施策展開する。

富士山オーバーツーリズム対策パッケージの2024年の主な取り組み
富士山オーバーツーリズム対策パッケージの2024年の主な取り組み

 富士山は23年夏の登山者数が新型コロナウイルス禍前の水準に回復したが、一部で混雑や迷惑行為が問題視された。こうした状況が登山者の満足度を下げ、自然環境を損なう恐れがあるとして、構成団体の施策を体系化した。
 4ルート共通の課題として、特定の日時やルート混雑の偏在▽弾丸登山など危険な登山▽ルール・マナー違反―に3分類し、中長期の方向性も盛り込んだ。
 環境省は自然公園法やエコツーリズム推進法など法的枠組みによる規制について勉強会を開催。同協議会が運営する「富士登山オフィシャルサイト」に、新たな対策の特設サイトを開設し情報発信も強化する。
 山梨県は、新たに制定した県条例を根拠に、吉田ルートのスバルライン5合目にゲートを設置し、1日の登山者上限数4千人を超えた場合にゲートを閉じるほか、県有地の通行料2千円徴収を義務化して混雑を緩和する。毎日午後4時~翌日午前3時もゲートを閉じ、弾丸登山を抑制する。
 登山ルートが県有地ではないため、条例制定が困難な状況にある静岡県は、入山希望者がスマートフォンやパソコンからウェブサイトで事前登録するシステムを構築し、今夏に社会実験を実施する。登山日程や山小屋宿泊予約の有無を入力し、登録時点でルールなどを学ぶ仕組みを設ける予定。3登山口のマイカー規制駐車場などで山小屋予約のない来場者に午後4時以降の登山自粛を求める。混雑状況把握にもつなげる。
 同協議会は24年秋に開催する会合で実施状況を評価し、25年3月に対策を見直す方針。
 (政治部・青島英治)

静岡県/ウェブ管理 山梨県/入山を規制 識者ら「方向性の統一を」
 富士山のオーバーツーリズム対策パッケージを議論した28日の富士山適正利用推進協議会では、静岡、山梨両県の“規制”の方向性の違いへの懸念や、一体的な管理に向けた連携や情報共有を求める意見が相次いだ。
 山梨県は条例に基づき、5合目ゲートで人数制限や夜間の通行禁止を実施する。条例での規制が難しい静岡県は法規制の可能性を検討しつつ、ウェブ登録システムの構築を目指す。
 専門委員の山本清龍東京大大学院准教授は「山梨県はゲート設置で宿泊者照合、静岡県はIT活用と方向性が大きく違う。全体管理を考えた時に方向性の統一を目指すべき」と指摘。特に山梨県側の規制の運営の具体化を求めた。本県が検討を始めるエコツーリズム推進法の活用についても「富士山の全体構想を作成すべき」と述べた。
 両県の山小屋関係者からも「富士山全体で同じ仕組みが理想」「同じルールに」との意見が複数出た。
 山梨県の山小屋関係者からは、静岡県が新たに構築するウェブ登録システムを両県で展開する可能性や、法規制議論の共有を求める意見があった一方で、静岡県担当者は山梨県側の宿泊予約の照合方法の情報共有を求める質問をした。共有の方針は確認されたが、両県とも「検討中」として明確な回答をしなかった。

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