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テーマ : 長泉町

大腸検査に「内視鏡AI」 精度一定、見落とし防ぐ 静岡県立静岡がんセンター

 静岡県立静岡がんセンター(長泉町)が、大腸のがんやポリープを見つける内視鏡検査で人工知能(AI)の支援を受ける「内視鏡AI」の活用を進めている。大腸がん検査の課題とされる見落としを防げるのが最大の特長。千人以上の検査で用いた実績があり、国内の病院では先進的という。

AIの支援を受ける内視鏡検査を実演する今井健一郎医長=7月下旬、長泉町の県立静岡がんセンター
AIの支援を受ける内視鏡検査を実演する今井健一郎医長=7月下旬、長泉町の県立静岡がんセンター


 内視鏡の世界トップメーカー、オリンパスのプログラム「EndoBRAIN(エンドブレイン)」を2019年から本格運用している。内視鏡で撮影した大腸の画像を認識し、がんやがんの元となるポリープなどを発見する。医師による内視鏡操作が早すぎる時に警告する機能もある。
 内視鏡検査では医師の力量の差による病変の見落としが課題だった。AIは人間より早く、多くの画像を認識できる上、常に同じ精度を維持する。研修医による診断にも役立つという。
 がんセンターはAIの学習データとなる画像を提供するなどオリンパスと共同で研究開発を進めてきた。ベトナムやインドに医師が赴いて操作方法を説明するなど、各国での普及にも一役買っている。
 現在、患者の検査準備が整っているかを画像から判断するAIを大学と共同で開発している。実用化できれば、腸内に残った便で病変を見落とすリスクを軽減できる。がんセンター内視鏡科の今井健一郎医長(46)は「人的ミスを最大限減らし、診断の質を高められる」と意義を強調する。別の医師が、より難易度が高いとされる胃の検査での実用化も目指してメーカーとの共同開発を進めている。
 (東部総局・矢嶋宏行)

ポリープ即時切除率96%に
 県立静岡がんセンターでは、内視鏡AIの実用化により、検査で見つかったポリープをその場で切除する比率が5~6割から96%に高まった。別の日に改めて切除するケースに比べ、患者と病院の双方にメリットがあるという。
 内視鏡AIには良性ポリープか、がんにならない非腫瘍性ポリープかといった種類を判別する機能がある。これにより医師は特別な処置が必要な場合を除き、その場で最善の方法を選択して切除できる確率が高まったという。
 大腸はポリープが見つかる割合が高く、多くの患者の処置が必要になる。その上、切除はあくまで予防的措置のため「安全、迅速、確実に行う必要がある」(今井健一郎医長)。検査と切除が一度にできれば患者の体の負担軽減や待ち時間の短縮となり、病院はより多くの患者に対処できるようになる。
 ポリープ切除で主流になっているESD治療は大腸に穴を開けるリスクがあるため、同センターは他に選択肢があれば、より安全な方法を選んでいるという。

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