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テーマ : 長泉町

〝お試し期間〟あってもいい、自分が否定されている思い... シニア雇用 年齢で判断されるのはあり?④ キュレーター/読者の意見【賛否万論】

ハローワーク静岡で開かれた60歳以上対象のシニア面接会=23日、静岡市駿河区
ハローワーク静岡で開かれた60歳以上対象のシニア面接会=23日、静岡市駿河区

 年齢だけで採用を判断されるのは年齢差別ではないかというシニア層の声を受けて、前回まで3週にわたり有識者のインタビューを「賛否万論」に掲載するとともに、1面や社会面で関連記事を展開し、実態と課題を探ってきました。現役世代の減少に伴い目減りする年金受給額の問題、シニアと企業の双方に当てはまる「年齢に関する思い込み」などに焦点を当てました。キュレーターや読者の意見を紹介します。 〝お試し期間〟あってもいい
 


キュレーター 高木有加さん(長泉町)

1男1女の母。ママ防災塾マモルマムズ代表。レンタルスペース「ママとこどものヒミツキチmorisbase」の管理人。ミッションは「孤独な子育て、ダメ、ぜったい。」

 10代で働き始めた頃、「60歳」ははるか遠く、シニアと呼ばれる人たちはとても“年を取った人”に思えていたし、“完成した人”だと思えたし、だから年を取ったら退職後は縁側でのんびり過ごしたいと考えていました。
 けれど、だんだんと「定年」の年齢がリアルに近づいてくると、いやいや意外と、60歳でも全然、体は動くし、未完成だし、誰かと何かやりたい気持ちは変わらずある、いや、ますます募るのだと感じることが多くなりました。そんなパワフルなシニアが私の周りにはとても多い! 周囲でも定年後は再任用やシニア雇用を利用する人が増えてきましたが、「あえて」仕事は引退して、旅やプライベートを満喫する方もいて、そんな日々がまぶしかったりもします。
 定年制について調べてみると、あるサイトに「記録に残っている最古の定年制は、1887年に定められた東京砲兵工廠[こうしょう]の職工規定で、55歳定年制でした。当時の平均寿命は50歳くらいだったので、55歳は平均寿命よりかなり長いものでした。(中略)文字通り『終身』雇用であったと言えるのかもしれません」とあった。
 現在、時代は人生80年から100年時代へ。60歳は十分に元気な年齢であるし、そのことだけで「それならもう結構です」なんて言われてしまうのはやはり悲しいし悔しい。「私を知ってから判断してください‼」。きっと私なら面接官にそう言うだろう。そのための、“お試し制度”や“お試し期間”があってもいい。もちろんそこまで思えるくらいにその会社を魅力的な会社だと思えたら、です。そしてそう思える会社がなかったら、「魅力的だと思える仕事をつくる」のも一つだと思っています。今は雇用されるばかりでなく、誰でも仕事を創り出せる起業の時代でもあるわけですから。
 働くということは、もちろん生活のためというのは大前提にあるけれど、と同時に、誰かと交わりを持ち、自信を得られる、元気になることでもあるわけで。定年は終わりでなく、ネクストステージの始まり。
 シニア雇用を考えることは生き方を考えること。人生の後半をどう働いてどう楽しんでどう生き切るか。スーパーやファストフード店でむしろ若い人よりも生き生きと働き笑うシニアさんの姿を見かけると、純粋に、見ていてカッコいいと憧れる。今のところ、そんなシニアに私はなりたい。


学校も塾も 年齢差別にがっかり  読者 まるしぇさん(富士市)

 私は46歳の時に看護学校の試験を2校受けた。一つは数学があったので落ちたのは分かるが、もう1校は5倍の倍率の筆記試験に合格したが、2次の面接で落ちた。
 次の年の学校説明会で、私が「年齢で落ちることはありますか」と聞くと、担当者は「あなたの場合、卒業しても数年しか働けませんよね。同じ成績なら若い人を採ります」と答えた。1次合格の学校にも尋ねると女性校長が、すごい眼でにらみつけて、「あなたが落ちたのは年齢ではありません。総合的な判断です」と言われた。
 その後、「英検準1級まで指導します」と言う英語塾に入ろうとしたら「大人は駄目」と断られた。
 学費を払う学校でも年齢差別はある。

コミュニティースクール活用してみては

キュレーター 松浦静治さん(島田市)

任意団体Study Like Playing代表。20年間の小中学校教員生活の後、早期退職して地域で子どもを育む活動を実践。フリースクール、寺子屋、自然体験教室などを展開

 シニア雇用には、その人の持っているスキルや健康状態、人との接し方などのマッチングが大切です。しかし、一度の面接でそれを見抜くのは難しい。そこで、私は普段から地域で人がもっとつながることができないかと考えています。
 その方法として、私が期待しているのは文部科学省も提唱している「コミュニティースクール」という構想です。学校をもっと地域に開放して、地域の人たちみんなの生涯学習の場にしたら良いと思うのです。
 放課後の学校に、子どもや地域の人誰もが集い、一緒にお菓子やお料理づくりをしたり、木工や電気工作をしたり、パソコンを学んだり。その中で既に持っているスキルを生かしたり、新たなスキルを身に付けたりすることができると思います。また、普段から接することでその人の健康状態や人との接し方が分かり、よりその人にふさわしい仕事へのマッチングがしやすくなるのではないでしょうか。
 地域の中には、さまざまなスキルを持った人が暮らしています。しかし、地域の人のつながりが希薄になってしまったことで、それが見えにくくなっています。この関係性をつくり直すことができれば、地域の中で新たな仕事が生まれ、新たなシニア雇用も生み出すことができると思うのです。
 しかし、まだ「コミュニティースクール」の構想はあまり動き出していません。放課後の学校の安全管理や施設管理の責任を誰が負うのかといった課題があるからです。でも、それこそ退職教員などのシニア層を安全管理者として雇用すれば実現できるのではないかと、私は期待しています。


自分が否定されている思い  読者 栗田さん(静岡市清水区)

 私は65歳、今年の3月に退職しました。しばらくは年金をもらいながら生活を送ればと思っていましたが、いざ仕事を失い、家にいると何か不安な気持ちになってきました。まだ体も動くし負担をかけない短時間勤務の仕事であればと思い、求人情報などから自分ができそうな仕事を探し、幾度となく挑戦しましたが、結果は全て不採用でした。
 なぜなんだ、心が折れました。
 何が悪いのか、年齢なのか、履歴なのか、それとも人物なのか、そのたびに自問自答し、自分が否定されている思いでした。
 できれば、その原因を会社側に聞いてみたいくらい腹立たしく思いました。
 これが厳しい現実かと身に染みて感じました。
 それでも気持ちを切り替え次への挑戦に向かっていますが、自分でも情けなく思えてきました。
 結果通知の決まり文句「厳正なる(審査の)結果、ご期待に添えません」。厳正なる基準は何なのか、もらった者は原因が分からない。今後に生かす意味でも、はっきり納得のいく形で示すべきではないか。それから面接時の言い方で、期待するような紛らわしい言い方はやめた方が良い。例えば、これはできそうなのでやってもらうとか、経験があるから大丈夫とか。
 私がこれまで幾度となく不採用の結果を受け、思うに、最初から採用者は履歴などで決まっているのでは、面接は単なる形式的に行われているだけと勘ぐりたくなる。それと、採否の決め手は年齢よりも履歴ではないか、つまり、学歴や経歴の優れた人が選ばれるのではと思う。特に根拠はないが、そう思う。ただ、そうなると、自分は救われないが。
 愚痴った内容になってしまい申し訳ありませんが、私の今の心境をどんな形でもいいから伝えたかった。

 キュレーター

  「しずしんニュースキュレーター」は、新聞記事や時事問題の“ご意見番”として、静岡新聞の記者が推薦した地域のインフルエンサーです。毎回それぞれの立場や背景を生かしたユニークな視点から多様な意見を寄せてもらいます。

 次週も同じテーマでキュレーターや読者の意見を紹介します。

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