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伊勢エビ、アワビ不漁深刻 黒潮蛇行要因? 伊豆南部「死活問題」

 伊豆半島南部の特産として知られる伊勢エビやアワビといった高級海産物が近年不漁に見舞われている。南伊豆町では伊勢エビの水揚げがこの3年でおよそ半減し、近隣を含めアワビも減少傾向。黒潮大蛇行に伴う海水温上昇との関連性を指摘する意見もあり、同地域主力産業の観光、漁業関係者は「このまま状況が改善しなければ死活問題だ」と苦悩している。
伊豆漁協南伊豆支所の直売所で販売されている伊勢エビ=今月上旬、南伊豆町
 「漁獲減が漁業者の所得減に直結している。もはや町全体の問題だ」。全国有数の伊勢エビ産地として知られる南伊豆町。伊豆漁協南伊豆支所運営委員長の高野譲さん(66)が窮状を訴える。「漁協だけで対応できる問題ではない」(同支所)とし、国レベルでの支援を求めている。
 一方、近隣の下田市でも伊勢エビとともに特産のアワビの水揚げが減少傾向にある。市によると、市内の2022年の水揚げ量は約6・2トン。10年以降で最も少なかった20年の約4・3トンからは回復しているが、02年から04年にかけては毎年10トン以上が水揚げされていた。市産業振興課の本間洋係長(47)は「下田にとって海産物は重要な観光資源。漁協と連携し何らかの対策を講じる必要があるが、なかなか解決策が見つからない」と明かす。
(提供写真)カジメの磯焼けが発生した海中=下田市沖(県水産・海洋技術研究所伊豆分場提供)
 不漁の背景にあるとみられるのが、観測史上最長の期間で長引く黒潮大蛇行だ。県水産・海洋技術研究所伊豆分場(下田市)によると、周辺の海域では海中の水温が上昇。アワビの餌となる海藻のカジメの生育状況が悪化している。水温が上昇し、カジメを好むブダイの活動が活発化し磯焼けが進行したことも拍車をかけているとみられる。
 同分場の長谷川雅俊主任(63)は「大蛇行の影響を直接的に受けているのはアワビだが、食物連鎖の観点から伊勢エビも影響を受けている可能性がある」と指摘。その上で「現時点で大蛇行が収まる兆候はない。今後も伊豆半島の漁業は影響を受けるだろう」とみる。
 (下田支局・伊藤龍太、松崎支局・太田達也)
近年の伊豆漁協南伊豆支所の伊勢エビとアワビ水揚げ量
 <メモ>伊豆漁協南伊豆支所(南伊豆町)によると、2022年の同支所における伊勢エビの水揚げ量は15・8トンで、19年の30・9トンの約半分となった。09年は44・9トンで、かつては50トンを超えた年(01年)もある。
 23年も9月に伊勢エビ漁が解禁となったが、不漁で価格は高止まりしている。200~350グラム程度のサイズが多く大きさは例年並みというが、水揚げ初日の直売所の販売価格は1キロ当たり9720円。22年(8640円)に比べ千円以上高くなった。18~21年は6千円台で推移した。
 アワビの水揚げ減も続く。同支所では19年の8・6トンに対し、22年は3・9トンだった。

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