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恐竜の巣作り、鳥への進化後押し “新説”自著で発表 下田の絵本作家・鈴木まもるさん

 巣作りが恐竜の鳥への進化を促した? 下田市の絵本作家で鳥の巣研究家の鈴木まもるさん(70)が自著で、恐竜の進化と鳥の巣の関連についての研究成果を発表した。小型恐竜が飛行能力を得た過程ははっきりしていないが、鳥の巣との関連に着目したのは世界的にも珍しいとみられる。

鈴木まもるさんが自宅敷地内に設けた「鳥の巣研究所アトリエ」には巣がところ狭しと並ぶ。本人も「何個あるか分からない」と話すほど=2022年12月下旬、下田市
鈴木まもるさんが自宅敷地内に設けた「鳥の巣研究所アトリエ」には巣がところ狭しと並ぶ。本人も「何個あるか分からない」と話すほど=2022年12月下旬、下田市

 鈴木さんが研究をまとめたのは絵本「鳥は恐竜だった」(アリス館)。約40年間にわたり鳥の巣を研究し、ライフワークとしている鈴木さん。巣の形態の変遷を調べる中で、鳥の出現が恐竜の時代までさかのぼるとの歴史に触れ、「巣を作り卵を産むのは鳥も恐竜も同じ。関連があるのでは」と推察した。小型の恐竜は卵や生まれて間もない子供を守るためにさまざまな場所に巣を作るようになり、それぞれの環境で育つことで飛行能力を身に付け、現在の鳥に進化したとの仮説を提唱した。
 さらに着目したのが6600万年前の巨大隕石(いんせき)の地球衝突だ。定説では地球環境が激変して大型恐竜は絶滅し、鳥に進化した小型恐竜が生き延びたとされるが、詳細は分かっていない。鈴木さんは巣が大きな役割を果たした可能性に言及。未熟なひなを守れる安全な巣を体外に作れるようになったため親鳥が小型化し、過酷な環境でも少ない食料で十分になり、繁殖間隔も短縮して生き残ったと考える。
 「巣の形は気まぐれではなく、子孫を残すという強い動機の表れだ」と鈴木さん。巣の化石が存在しないため研究されてこなかったものの、巣作りが結果的に恐竜の鳥への進化を後押しした可能性を指摘し「自然の形態において無意味なものはない」と訴える。
 鈴木さんは今作でまとめた内容を発展させて論文を執筆し、発表することを目指している。

飛行取得 三つの説 巣の設置環境に起因か
 恐竜の飛行能力の取得には謎が多く、研究者の中には主に三つの説があるが、鈴木さんは「どれも正しいのでは」との見解を示す。
 小型の恐竜が羽ばたく筋肉を得た過程に関する三つの説は①倒れた木を駆け上がったり、坂道を飛び降りたりするうちに取得②地上を走りながら跳びはねているうちに取得③木に登って枝から飛び降り、滑空しながら得た-。
 鈴木さんはやぶの中や水辺、木の上など、三つの説それぞれが鳥の巣の設置環境に関連していると着目。「それぞれが反論し合っているのは、巣の観点がないから。さまざまな巣の場所に応じた手法で飛び方を身に付けていった可能性はあるはずだ」と思いを巡らせる。

専門家も関心 「ありえる話」
 鈴木まもるさんの研究内容には、学識者や専門家も関心を示す。国立科学博物館の前館長で同館顧問の林良博さんは「恐竜の鳥への進化は広く述べられているが、鳥の巣と結び付けたのは大変斬新。恐竜の新しいイメージにつながるかもしれない」との見解を示す。
 恐竜の繁殖や子育てを専門とする筑波大の田中康平助教も「恐竜学者には思いつかない発想。進化は世代交代を繰り返して起こる現象で、巣作りの多様化が絶滅時期の生き残りにつながっていったというのは、十分にありえる話だ」と指摘する。「飛行能力獲得の過程についても、巣の周辺の気流まで考慮していて論理的」と評する。

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