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キンメ精子 冷蔵保存成功 静岡県水産・海洋技術研究所と筑波大

 静岡県水産・海洋技術研究所伊豆分場(下田市)と筑波大下田臨海実験センターは、キンメダイの精子の冷蔵保存液開発に成功した。伊豆を代表する産品は近年不漁が続いていて、資源確保の一助につながる可能性がある。「日本水産学会誌」の電子版にこのほど発表した。

研究成果を説明する長谷川雅俊主任。開発した保存液中の精子が海水に触れると活発に動き出す=5月下旬、下田市の県水産・海洋技術研究所伊豆分場
研究成果を説明する長谷川雅俊主任。開発した保存液中の精子が海水に触れると活発に動き出す=5月下旬、下田市の県水産・海洋技術研究所伊豆分場
静岡県のキンメダイ漁獲量の推移
静岡県のキンメダイ漁獲量の推移
研究成果を説明する長谷川雅俊主任。開発した保存液中の精子が海水に触れると活発に動き出す=5月下旬、下田市の県水産・海洋技術研究所伊豆分場
静岡県のキンメダイ漁獲量の推移


 人工授精の後に、育てた稚魚を海に放つための種苗生産の技術確立が狙い。同分場によると、キンメダイの人工授精は従来、漁船に研究者が同行し船上で実施していた。ただ、成熟状態が同程度の雄雌の同時確保が困難で、成功事例は少なかったという。
 キンメダイは雄と雌で成熟期が1~2カ月ほどずれているため、運動能力や受精能力を維持した上で精子を冷蔵保存する必要性があるという。7年にわたり研究を続けた結果、塩化カリウムと塩化カルシウムなどを含む塩化ナトリウム溶液が冷蔵保存に適していると判明。同様の溶液では冷蔵保存後も81日後まで精子の運動能力が保たれ、受精と卵のふ化に成功した事例もあったという。
 下田近海の特産品として知られるキンメダイだが、分場によると漁獲量の減少や漁業者の減少が続いていて、種苗生産の技術確立の必要性が増している。今後はふ化後にある程度まで成長した稚魚を海に放ち、自然で成長した成魚を漁獲する「栽培漁業」まで実現させたい意向。同分場の長谷川雅俊主任(63)は「今回の研究成果を利用し、キンメダイの資源回復まで図りたい」と見据える。  県内の漁獲減 鮮明  キンメダイの水揚げ量(2021年)は本県が1321トンで全国最多。全体のおよそ3割を本県が占めている。一方、伊豆の各地でブランド化が進む中で漁獲量の減少が鮮明になっていて、需給バランスが崩れていることがうかがえる。
 最盛期の1980年代前半には8千トンに迫る年もあったが、その後は減少傾向が続く。県は需要増に伴う乱獲や近年の長期に及ぶ黒潮大蛇行のほか、漁業者の減少も背景にあるとみているが、詳細ははっきりしないという。
 県水産・海洋技術研究所伊豆分場によると、下田や東伊豆の稲取、伊東のほか御前崎でも水揚げ実績があるが、伊豆の減少幅が大きい。21年は県全体で前年比270トン増だが、要因は不明という。増加した年でも微増で、県は課題解決にはつながっていないと分析している。
 (下田支局・伊藤龍太)

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