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須崎(下田)古文書をデジタル化 研究者有志が2年かけ2000点 当時の漁、新史料も

 下田市の須崎地区に400年以上前から伝わる古文書2千点を各地の研究者有志6人が約2年かけて撮影、デジタル化した。デジタル化の過程で新たな史料の存在も判明。漁業権争いなどの歴史解明につながるとし、関係者は「当時の漁や漁民社会の構造をうかがい知れる」と強調する。

「山海出入御裁許証文」の一部。全長10メートルにもなるという
「山海出入御裁許証文」の一部。全長10メートルにもなるという
古文書を確認する(左から)斎藤さんと森田さん、塚本さん=2日午後、下田市の須崎漁民会館
古文書を確認する(左から)斎藤さんと森田さん、塚本さん=2日午後、下田市の須崎漁民会館
「山海出入御裁許証文」の一部。全長10メートルにもなるという
古文書を確認する(左から)斎藤さんと森田さん、塚本さん=2日午後、下田市の須崎漁民会館

 「地域の実情がよく分かる。特産のテングサ漁に関して全国的価値のある史料です」。地元への撮影データ寄贈のため2日に須崎漁民会館を訪れた三重大教授の塚本明さん(62)=日本史=が古文書の重要性を訴えた。
 1590年から1985年にかけての古文書は、須崎財産区協議会が虫干しで管理してきたが経年劣化は避けられなかった。長年海女を研究する東洋大人間科学総合研究所客員研究員の斎藤典子さん(72)=静岡市葵区=が古文書の存在を知り、仲間に保全を呼びかけた。
 今回の調査で存在が明らかになったのは138点。関係者が特に貴重と説くのが「山海出入御裁許証文」と題された1773年3月の古文書。住民たちが地域を越えて漁業権を争った「明和の磯争い」の詳細を示す内容で、当時幕府に裁定された磯漁の漁場が今も受け継がれているという。他にも特産のテングサ漁に関する取り決めなどを示す古文書が残されている。
 一方、古文書の研究や公開には障害も多い。斎藤さんは「古文書には文化・歴史的価値がある一方、全国的には長きにわたる住民のプライバシーが公になることを恐れて公開を避ける事例もある」と指摘する。
 それでも、須崎区協議会区長の森田学さん(70)は「気を付けながらも、地域行事で展示して受け継ぎたい」と前向きだ。地域には古文書の解読技術がないため内容を知る住民も極めて限定的だった。「海に近く津波の懸念もある。安全な管理は課題だったので本当にありがたい」と強調する。

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