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静岡県立美術館・太田正樹さん顕彰 寄贈品展 現代美術コレクションに貢献

 静岡県立美術館(静岡市駿河区)は7月9日まで、同館に2008年度から美術作品の寄贈を続け、22年7月19日に89歳で亡くなった太田正樹さん(旧清水市出身)を顕彰する「太田正樹コレクション展」を開いている。22年度の70点を含め、15年間で106点の寄贈を受けた同館の木下直之館長は「館のコレクションを一緒に作っていくという域にまで達していた」と感謝する。

村上隆さんの「未知なる次元への旅立ち」(左、2016年)はプラチナ箔(はく)の地の上に独自キャラクターDOB(ドブ)君が描かれる。右は「何時かきっと出会える!でも、今は別次元を2人彷徨う」(同年)(写真部・二神亨)
村上隆さんの「未知なる次元への旅立ち」(左、2016年)はプラチナ箔(はく)の地の上に独自キャラクターDOB(ドブ)君が描かれる。右は「何時かきっと出会える!でも、今は別次元を2人彷徨う」(同年)(写真部・二神亨)
李禹煥さんの代表的シリーズから「線より」(右、1975年)。群青色の岩絵の具を含ませた筆の運びを反復。左は「点より」(76年)
李禹煥さんの代表的シリーズから「線より」(右、1975年)。群青色の岩絵の具を含ませた筆の運びを反復。左は「点より」(76年)
インド出身のアニッシュ・カプーアさんは作品を通じて異空間を創出する。おわん状の「Monochrome(Garnet)」(2015年)はつや消し塗料で真っ黒に塗られ、見る者の遠近感を混乱させる
インド出身のアニッシュ・カプーアさんは作品を通じて異空間を創出する。おわん状の「Monochrome(Garnet)」(2015年)はつや消し塗料で真っ黒に塗られ、見る者の遠近感を混乱させる
ガチョウの卵の中に粘性の低い黒の絵の具を入れ、画面に投げつけた「ONE」(2017年)。作者の大庭大介さん(袋井市出身)は、過去の美術作品を参照した上で、独自のアプローチを編み出した
ガチョウの卵の中に粘性の低い黒の絵の具を入れ、画面に投げつけた「ONE」(2017年)。作者の大庭大介さん(袋井市出身)は、過去の美術作品を参照した上で、独自のアプローチを編み出した
村上隆さんの「未知なる次元への旅立ち」(左、2016年)はプラチナ箔(はく)の地の上に独自キャラクターDOB(ドブ)君が描かれる。右は「何時かきっと出会える!でも、今は別次元を2人彷徨う」(同年)(写真部・二神亨)
李禹煥さんの代表的シリーズから「線より」(右、1975年)。群青色の岩絵の具を含ませた筆の運びを反復。左は「点より」(76年)
インド出身のアニッシュ・カプーアさんは作品を通じて異空間を創出する。おわん状の「Monochrome(Garnet)」(2015年)はつや消し塗料で真っ黒に塗られ、見る者の遠近感を混乱させる
ガチョウの卵の中に粘性の低い黒の絵の具を入れ、画面に投げつけた「ONE」(2017年)。作者の大庭大介さん(袋井市出身)は、過去の美術作品を参照した上で、独自のアプローチを編み出した


 航空経営学を専門分野として長年早稲田大で教えた太田さんは04年に帰郷。1970年代から作品を収集していたという。2006年の同館「我が愛しのコレクション展」に20作品を貸し出し。08年度以後はほぼ毎年、同館に寄贈を行った。
 1960~2017年に制作された東西の現代美術106点。内訳は油彩17点、素描・水彩16点、版画40点など多岐にわたる。太田さんと交流を深めた川谷承子上席学芸員はコレクションを俯瞰[ふかん]し、「非常に洗練された感覚を持っている」と印象を話す。
 最多41点を占めるのが、戦後の日本美術の潮流「もの派」の代表的作家李禹煥[リウファン]さん。同館ではこれまで絵画1点を所蔵していたが、新たに絵画、版画など1975~2006年の重要作品が大量に加わった。平面での実践の軌跡を広く見渡せるようになったという。
 村上隆さんの「未知なる次元への旅立ち」(2016年)は、同館に村上さん作品がないことを踏まえて発注した作品。太田さんは同館の収蔵品に欠けた部分を補うように作品を購入し、寄贈していたという。
 木下館長は「研究でドイツに滞在していた時期に(互いに支え合う)住民と美術館の関係に感銘を受けたと聞いている。寄贈者の中でも非常にまれなスタンスで館に関わってくださった」と振り返った。

 同展ではコレクションから選抜した20点を展示。6月11日、7月2日のそれぞれ午後2時から、学芸員による展示解説を行う。

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