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社説(2月21日)北京冬季五輪 感動と疑念交錯し閉幕

 7競技109種目が行われた北京冬季五輪が閉幕した。スポーツの感動にとどまらず、人権や環境、ドーピング、判定などさまざまな疑念が交錯した大会だった。
 日本は金3個を含め18のメダルを獲得した。前回2018年の平昌大会の13を超え、冬季大会過去最多となった。新型コロナウイルスの感染拡大で練習や遠征が思うようにできなかった中での健闘をたたえたい。
 スピードスケート女子1000メートルで金メダルに輝いた高木美帆選手は、5種目7レースに出場した。銀3個を含め1大会4個のメダルは冬季大会で日本勢最多となった。ノルディックスキー・ジャンプ男子ノーマルヒルの小林陵侑選手、スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢選手も頂点を極めた。
 静岡県からはフリースタイルスキー男子モーグルで袋井市出身の杉本幸祐選手、スノーボード女子パラレル大回転で掛川市の三木つばき選手がともに初出場。2人とも決勝で9位と健闘した。4年後に向けて大きな自信になったのではないか。
 ノルディックスキー・ジャンプ混合団体は1回目に女子の高梨沙羅選手がスーツの規定違反で不運にも失格となった。しかし、失意の高梨選手や小林選手ら4人は2回目に大ジャンプを披露し、1回目の8位から4位まで追い上げた。諦めない精神力とチームワークに胸を打たれた。
 フィギュアスケート男子の羽生結弦選手は、誰も成功したことのない4回転半に挑んだ。着氷で転倒し、五輪3連覇を逃したが、高みを目指し続けた向上心と努力に拍手を送りたい。スノーボード女子ビッグエアで大技に挑戦し、失敗した岩渕麗楽選手に、各国のライバル選手たちが駆け寄ってたたえたのも印象に残る場面だった。
 フィギュアスケート女子で金メダル候補だったロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ選手は、禁止薬物検査で陽性が確認されたにもかかわらず、出場が認められた。スポーツ仲裁裁判所が「16歳未満の要保護者」であることから資格停止処分を科さないとした。
 ドーピング違反の疑惑が残ったままでの出場容認は疑問だ。国際オリンピック委員会(IOC)は毅然[きぜん]とした態度を示すべきではなかったか。ROC1位、日本3位の混合団体は、暫定順位のためメダル授与式は結論が出るまで延期された。
 公正・公平に行われなかった大会として記憶に残るだろう。スピードスケート・ショートトラックの“中国びいき”ともとられる疑惑の判定や、スノーボードの不可解な採点も波紋を広げた。
 ジャンプなどスキーが行われた河北省張家口の会場は雪が少なく、人工雪で整備された。水不足が深刻だといわれる北京で約2億リットルもの大量の水を使用。雪解けを遅らせるために水に化学物質を混ぜる場合もあるという。生態系など環境への影響が心配だ。
 08年の夏季大会に続き、初めて夏冬の五輪を同一都市で開催した北京。国際的な地位を高めたい中国政府による国威発揚の大会である。米英などは中国の新疆ウイグル自治区の人権弾圧に抗議して「外交ボイコット」を行い、大国間に禍根を残した。
 中国は、開会式の聖火リレーの最終走者にウイグル族の女性選手を起用し、融和をアピールした。IOCのバッハ会長は、中国共産党幹部を告発し一時消息不明になった中国の女子テニス選手と競技を観戦した。
 熱戦が繰り広げられた陰で「平和の祭典」に水を差す政治的な利用が続き、後味の悪さは否めない。4年後はミラノ・コルティナダンペッツォに舞台を移すが、再び五輪のあり方が問われよう。開催国やIOCは、選手が純粋にスポーツに取り組んでいる姿を忘れてはならない。

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