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テーマ : 教育・子育て

部活顧問「断りたい人の力に」 現役教員、支援団体を設立

 部活動は生徒も先生もやりたい人がやればいい―。浜松市西区の市立中学校教諭鴨剛太朗さん(49)が12月上旬、部活動の顧問を拒否したい教員を支援する職員団体「市対部活動問題ユニオン」を設立した。こうした団体は県内初とみられる。約20年の教員生活のうち、未経験の競技など10近くの部活で指導を担った鴨さん。部活が教員の多忙化の一因とみられ、各自治体が「地域移行」などの対策を探る中で「本来の仕事である教科指導、生徒指導に力を注ぎたいという人の力になる」と意気込む。

部活動の顧問を拒否したい教員を支援する職員団体を設立した鴨剛太朗さん。娘からもらった誕生日ケーキの写真を目に「家族を大事にしてこそ生徒指導にも力を注げる」と強調する=12月中旬、浜松市内
部活動の顧問を拒否したい教員を支援する職員団体を設立した鴨剛太朗さん。娘からもらった誕生日ケーキの写真を目に「家族を大事にしてこそ生徒指導にも力を注げる」と強調する=12月中旬、浜松市内

 都内の大学を卒業後、大手保険会社に勤めたが、学生時代に塾講師のアルバイトをしていたときから英語を教えるのが好きだったこともあり、卒業した大学に戻って教員免許を取得した。県内の中学校に赴任すると複数の学校で経験のない空手、野球、ソフトテニスなどの副顧問、顧問を務めさせられた。新婚でもほとんど休めず、休日に8時間以上も部活に費やすことも。主顧問がやる気のない運動部生徒に声を荒らげて行う指導、保護者らとの苦手な酒席などに「正直うんざりしていた」。
 長女が生まれたころ、妻からたびたび家庭の時間がないことの不満を聞かされ「本来業務以外のことに時間を使い、家族を大切にできていない」と痛感した。部活動に費やすほとんどの時間が超過勤務に含まれない実態に疑問を感じ、顧問を担うのを拒否する県外の教員らの活動に加わった。
 数年前からは勤務先の校長に掛け合い、部活にかかわらずにいる。小学校低学年の娘から最近もらった誕生日ケーキの写真を横目に「家族を大事にしてこそ、生徒指導にも力を注げるはず」と強調する。
 浜松市教育委員会は生徒の部活動入部を任意とし、教員には勤務時間外の部活指導を強制していない。鴨さんは「実質的には選択の余地がない。いい人だなと思える先生が、子どもたちのためだと管理職に説得され、嫌々ながら顧問を引き受けている」と指摘。今後はユニオンに加入した3人と共に、部活の顧問を拒否したい教員と校長との交渉を支援したり、部活の地域移行を推進したりして「どうしても嫌なことはノーと言い、教員の疲弊を解消していきたい」と語る。
 (浜松総局・松浦直希)
静岡県内各地 地域移行へ試行錯誤  公立中学校の運動部活動を地域のスポーツ団体に委ねる「地域移行」を見据えた動きは県内各地でみられる。教員の負担軽減につながると期待される一方、現時点では移行後の方針が必ずしも決まってはおらず、試行錯誤の段階にある。
 浜松市は2026年9月から、準備が整った学校から順次、休日の部活を地域に移行する。ことし9月に実施した市教委の実態調査では、教員の半数が部活に負担を感じ、8割は地域クラブ活動の運営、指導に携わりたくないと回答した。結果を踏まえ、運営主体や指導者を誰がどのように担うのかを協議中だ。
 静岡市は26年8月には休日の部活の地域移行を完了したい考え。本年度から、近隣の複数校の生徒が同じ競技のクラブで活動する実証事業「シズカツ」を始めた。指導者の半数ほどは兼業届けを市に提出した教員が担う。市教委は教員以外の「市民コーチ」の参画も将来的に促すという。
 沼津市は11月から24年1月まで、地域の競技団体などに相談の上で休日の部活にコーチを派遣してもらう実証事業を行っている。指導者は兼職兼業の許可を受けた教員ら。陸上競技は民間クラブも加わる。ただ、市教委の担当者は「休日だけ部活を地域移行したら、当日の大会引率はどうなるのか。このほか拠点への生徒の移動など検証すべき課題は多い」と指摘。市は休日、平日ともに地域移行を目指す時期を23年度末にも決める方針という。

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