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テーマ : 教育・子育て

園児のつぶやき集め半世紀「ねるってまほうだね」「くたびれちゃった」 静岡なかはら幼稚園 保護者「文集は宝物」

 静岡市駿河区の認定こども園「静岡なかはら幼稚園」(浅場美千代園長)が、日々の生活の中で子どもたちが発する「つぶやきことば」を保護者とともに“採集”し続け、半世紀が経過した。年1回編集する文集「こころのめ」は第50集を数える。記録された言葉の数々は「保育や子育てをする上で大切な手がかり」(浅場園長)であり、保護者にとっても「かけがえのない宝物」になっている。

 「おもしろいことは いいことなんだよ」―。第50集のタイトルになったこの言葉は、4歳11カ月(当時)の女児のつぶやき。お笑い芸人のまねをする女児に母親が「何でまねしているの」と尋ねると、こう答え、「みんながたのしめるから」と続けたという。
 同園でつぶやきの記録が始まったのは1973年。創立者の浅場慶夫氏が、園児の母親から「子どものことがよく分からない」と言われた際に、子どもの言動や気持ちに理解を深める方法として提案したのがきっかけだった。
 入園時に1冊のノートを保護者に渡し、記録した年月日と年齢、記録者の名前、その時の状況や感想を書き留めてもらう。年に3回、ノートを回収し、担任がコメントを付けて返却する。保育者も園活動でのつぶやきを主に乳児を対象に記録している。文集には0歳児から年長児までの全園児のつぶやきと、保護者や担任、園長のコメントを掲載している。
 共働きが主流になる中で、時間的な余裕のない家庭も少なくないが「だからこそ、つぶやき採集のような活動はますます重要になっている」と浅場園長は指摘する。「忙しい毎日だからこそ、親と子が目と目を合わせる時間を意識的に確保してほしい」と願い、「自分の言葉を『ちゃんと聞いてもらえている』という実感が、子どもの心を育てる」と強調する。
 自身も卒園児で、次女が同園に通う石黒琴美さん(36)=同区=は「子どもの頃、文集を親に読んでもらうのが楽しみだった」と振り返る。現在は子のつぶやきを採集する立場になり、「子どもの言葉にはっとすることは多いが、メモをしなければ、そのまま忘れてしまう。園の取り組みがあるおかげで、大切な思い出として残しておける」と意義を実感している。石黒さんの母、柴山貴代さん(64)=同区=も「孫が新しい文集を持ち帰ってくると懐かしくなり、子どもたちの分も読み返している」と語り、文集を宝物にしている。
 (生活報道部・大滝麻衣)
これまでに発行された文集「こころのめ」を見返す(右から)浅場美千代園長、柴山貴代さん、石黒琴美さん=静岡市駿河区の静岡なかはら幼稚園

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