あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 教育・子育て

【第4章】 学びの保障㊦ 残された課題、届かぬ支援「平等」切望【青春を生きて 歩生が夢見た卒業】

 寺田歩生[あゆみ]さんの挑戦がきっかけとなって、静岡県内の県立高で導入された病気療養する高校生への遠隔授業。制度化されて2年目の2023年度には利用件数16件と全国最多レベルとなった。

学習支援の情報の乏しさを訴えるるいさん(仮名)の母親=13日、県内(写真の一部を加工しています)
学習支援の情報の乏しさを訴えるるいさん(仮名)の母親=13日、県内(写真の一部を加工しています)

 当初、遠隔授業が出席扱いと認められず留年を余儀なくされた歩生さん。「同じようなつらい思いをする生徒を出さないで」という母有希子さん(54)の願いは、着実に実を結んでいる。ただ、課題がないわけではない。
 「出席扱いにはならない」。県中部の県立高に長女るいさん(仮名)が通う母親は昨年、学校側からそう言われた。消化器系の難病を患い、頭痛や体調不良で毎日登校することができなくなった。進級できない可能性が出てくることへの焦り。遠隔授業の実施を求めたが、色よい返事はもらえなかった。インターネットでも手がかりを探した。見つけた情報は入院中の生徒しか対象にならないように読め、諦めた。るいさんは自宅療養していた。
 県教委高校教育課の担当者は遠隔授業の実施について「最終的には各学校の判断」としつつ、「必ずしも入院していなくても、自宅療養が必要と医師から診断された場合なども対象となる」と説明する。こうしたことが学校現場に十分浸透していない課題が浮かぶ。
 県教委は遠隔授業の導入と合わせ、「医教連携コーディネーター」という制度を作った。病気療養する生徒の治療と学びの両立を支援する役目で、歩生さんが県立磐田北高に在学していた当時の校長鈴木真人さん(62)が就いている。2年間で15件の支援を行ったが、るいさんは鈴木さんにつながっていない。
 治療を受けている病院からも学校からもそうした情報はなかったという。るいさんはぎりぎりで進級できたが、母親は「日々の体調管理や治療のことで頭はいっぱいいっぱい。取りにいかなければ支援の情報は分からないのではなく、与えてほしい」と訴える。
 遠隔授業の実施について県立高には県教委が定めた指針がある一方、私立高は各校の判断に委ねられている問題もある。白血病を発症した県東部の男子生徒は、在学する私立高に遠隔授業の制度がなかったため進級の見通しが立たず、通信制高校に転学した。
 「病気療養で学校に行けない高校生も平等に教育が受けられるようにしてほしい」。県中部の私立高1年時に白血病を患い、遠隔授業の制度がなかったため留年を経験した大学生の女性(20)は、切望する。

 メモ 病気療養する生徒への学習支援については、中学と高校の接続時の課題もある。例えば、高校受験を控えた中学3年で発症した場合、病院内の院内学級に転籍するよりも、中学に在籍したまま遠隔で授業を受けた方が本人への負担が少ないケースがある。保護者も病院側も学校に遠隔授業を求めることが想定されるが、院内学級で学習の機会が保障されているとされる中学では、遠隔授業で学習を補うという考えが取り入れられにくい。医教連携コーディネーターの鈴木真人さんは「課題の整理が必要」と指摘する。 【連載】青春を生きて 歩生が夢見た卒業 バックナンバー

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

教育・子育ての記事一覧

他の追っかけを読む