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テーマ : 教育・子育て

「リトルベビー」子育て課題共有 静岡でセミナー、当事者が支援訴え

 早産などにより小さく生まれた低出生体重児や家族が抱える課題について考える「次世代を守る! 赤ちゃんの今と未来の健康セミナー」(日本家族計画協会など主催)が3日、「世界早産児デー」(17日)に合わせて静岡市駿河区で開かれた。本県は小さく生まれた赤ちゃんのための母子手帳「リトルベビーハンドブック」が全国に広がるきっかけをつくった“先進地”。全国から当事者サークルの代表者や医療、母子保健関係者など約100人が集い、交流を深めた。

全国のリトルベビーサークルの代表者などが集まった健康セミナー=静岡市駿河区
全国のリトルベビーサークルの代表者などが集まった健康セミナー=静岡市駿河区
会場に展示された全国各地の「リトルベビーハンドブック」
会場に展示された全国各地の「リトルベビーハンドブック」
全国のリトルベビーサークルの代表者などが集まった健康セミナー=静岡市駿河区
会場に展示された全国各地の「リトルベビーハンドブック」


 「人の励ましもつらく、情報もない。真っ暗闇に突き落とされた感覚だった」。2006年に第2子を452グラムで出産した登山万佐子さん(53)=福岡県=は講演で、出産直後の心境をこう振り返った。それでも前を向いて笑顔で子育てをしたいと考え、翌年に当事者家族の会「Nっ子ネットワーク カンガルーの親子」を設立。悩みを傾聴し合う月1回の定例会や、月齢などを気にせずに親子が安心して遊べる「遊びの広場」などを設けた。
 登山さんは当事者家族を取り巻く課題として「赤ちゃんが退院時、障害や医療的ケアの必要性が分かっていない場合、医療・福祉制度の対象外となり、在宅ですぐに頼れる専門家がいないという地域が多い。自分も退院後、張り詰めた気持ちで育児をした」と指摘し、支援の重要性を訴えた。

 ハンドブック浸透
 主に体重が1500グラム未満で生まれた赤ちゃん向けに作製され、全国に広がる「リトルベビーハンドブック」は、発育曲線のグラフが0グラムから始まり、「抱っこすると泣きやむ」などの行動を確認できた日を記入するのが特徴。一般的な母子手帳のグラフは1キロから始まり、月齢ごとの発育状況を「はい」「いいえ」の2択で答えるため、成長がゆっくりな場合は書ける項目が少なく、落ち込む親もいる。
 県内では静岡市の母親サークル「ポコアポコ」が11年にハンドブックを医師らと作製。18年に改訂し、必要な家族に確実に届けるために県発行となった。SNSで発信されたこともあり、各地の母親サークルが、国際母子手帳委員会事務局長の板東あけみさん(72)=京都市=のサポートを受けて自治体に導入を要望。現在までに40都道府県で発行された。
 板東さんはパネル討論で「ハンドブックにわが子の成長を書き込める喜びと、小さな変化に気づくまなざしは、他の子と比べない子育てのベースになる」と語った。全国の自治体で普及が進む状況については「母子保健担当者の意識が変わることで、リトルベビーと家族に対する地域社会全体の理解促進にもつながる」と意義を強調した。

 連携を深め声発信
 会場では、ポコアポコの母親とリトルベビーとして生まれ成長した子どもたちによるメッセージ動画や踊りも披露され、大きな拍手に包まれた。代表の小林さとみさん(56)は「リトルベビーハンドブックを縁に、全国のお母さんたちとのつながりを持てた。今後も連携を深め、今ある課題について、みんなで声を上げていきたい」と話した。
 (生活報道部・大滝麻衣)

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