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テーマ : 教育・子育て

「口出し」の裏にある苦悩(蔭山昌弘/スクールカウンセラー)【思春期の心 支える力 受験⑤】

 不登校の生徒がカウンセリングで次のように言いました。「母親は口を開けば、勉強はいいの? と、まるで私の成績が母親の成績でもあるかのようです。私の成績がいいと母親の鼻が高くなり、成績が落ちると当たりがきつくなるんです。だから親のために勉強を強いられているみたいです」と。

(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)

 このような思いを子どもに抱かせてしまう状態を、私は「『子育て通信簿』にとらわれる」と呼んでいます。子どものためにと思って「勉強しなさい」と言うのですが、その言葉の裏に、母親自身が、自分のプライドや、夫や祖父母の目を気にする思いなどが潜んでいる場合があります。生徒は敏感に感じ取って「お母さんは自分のために私に勉強しなさいって言っているんでしょう」と泣いて抗議したというのです。このお母さんは「わが子の成績が悪かったり、学校へ行かなかったりすると、周りから私が責められてしまうと思ってついつい口うるさく言ってしまう」と話してくれました。
 カウンセリングでは、親御さんご自身が「私が子離れできなくて、ついあれこれ口出ししてしまう」とか、「私自身が生きたかったような生き方を子どもに求めてしまっていた」「子育てより女性としての自分の生活を楽しみたいと思っていた」などなど、さまざまな苦悩を語られます。中には「一流大学、一流企業に進むことが唯一の幸せへの道だと考えてわが子に勉強を強いてきた」とおっしゃる方もいました。いずれも、子どもが不登校などさまざまな不適応を起こして「困った」と言って、カウンセリングに来られた時の言葉です。
 子どもは自立に向かって懸命に日々を歩いています。自分で考え、決め、行動しようともがいています。そのもがきが外から見えないために、親はじれったくなってつい口を出してしまいます。しかしそうした「口出し」の裏に、ここにつづった親の思いが隠れていると感じる時、子どもたちは自立を妨げられていると思ってしまいます。ではどうしたらいいのか、次回考えてみましょう。
 (蔭山昌弘・スクールカウンセラー=静岡市葵区)

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