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テーマ : 教育・子育て

子どもが自由に遊ぶ機会を 過度な保護 権利侵害にも

 子どもの遊び場を巡る状況が変わりつつある。「安全重視」のあまり遊びを制限する動きも。IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)日本支部代表で神戸女子大教授の梶木典子さんは「大人の過度な保護は子どもに対する権利侵害となる可能性がある」と語る。
 子どもの遊ぶ権利は日本も1994年に批准した「子どもの権利条約」の第31条に明記されています。遊びは「無駄なもの」と捉えられ、生死にダイレクトに関わる他の権利より後回しにされがちですが、IPAでは「子どもにとって遊びは食事と同じくらい大事」だと強調しています。
 子どもは遊びを通してコミュニケーション能力や社会性を発達させ、秘密基地作りや冒険遊びなど「危険」な遊びによってリスク管理を学びます。重要なのは、自分の意思でやりたいことを選択して決めること。屋内でのゲームも否定しませんが、子ども自身が規則を決める自由な遊びが必要です。過度な保護はその機会を奪いかねません。
 近年、遊びを巡る状況は大きく変わっています。2006年度と15年度に神戸市内の同じ学校区の子どもを対象に遊び場について調査しました。屋外では06年度は「団地、マンションの周り」「近所の道路」で遊ぶ子もある程度いましたが、15年度には減少し、「近所の公園」で遊ぶ子が大幅に増えました。
プレーパークで遊ぶ子どもたち
 公園は外遊びの場として以前よりも重要な役割を担っています。にもかかわらず、子どもたちが自由に遊べる場とは言えません。14年に神戸市東灘区の全公園を調べた結果、6割超でボール遊びの禁止など遊びを制限する看板がありました。老朽化した遊具が放置されていたり、遊具が健康器具に更新されるなど高齢者のニーズが優先されたりする傾向にあります。
 遊ぶ環境を整えながら適度な距離感で子どもを見守るプレーリーダーのいるプレーパークや、遊び道具を積み込んで移動するプレーカーなど、遊び場を確保するための取り組みも広がっていますが、まだ不十分です。
神戸女子大梶木典子教授
 まずは大人の視点を変える必要があります。昨年10月、埼玉県議会で子どもだけを公園で遊ばせることなどを放置による虐待と定める条例改正案が提出されました。子育て中の母親らの批判を受け撤回されましたが、一連の議論は大人の都合が優先され、「子どもが遊び育つ」観点が抜けていたように感じました。
 子どもが育つためには、安全な場所に囲って保護するだけではいけません。そもそも子どもが遊べないのは大人側に余裕がないからです。地域の中で遊ぶ環境を整備し、保護者がもっと子どもと一緒に過ごせる時間が増えるような働き方になることが大切です。
 (談)

 

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