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テーマ : 教育・子育て

フリースクール、経営難や周知不足が課題 静岡県内の小中学校、不登校は1学級1~2人 重み増す受け皿

 静岡県内で小中学生の「不登校」が増加する中、不登校の子の受け皿になっているフリースクールの経営難や周知不足が課題になっている。他県では行政が財政支援する動きも出てきているが、本県には補助制度はなく、保護者へのフリースクール情報の提供を拒む公立小中学校もあるという。フリースクール関係者からは行政支援を求める声が上がっている。

フリースクールで子どもたちに対応する見崎聡さん(左)。地元の企業や住民の支援も受けるが、運営は厳しい=焼津市
フリースクールで子どもたちに対応する見崎聡さん(左)。地元の企業や住民の支援も受けるが、運営は厳しい=焼津市


 県教委によると、公立小中学校で年30日以上欠席(病気は除く)した「不登校」の児童生徒は、直近の統計がある2021年度で8030人(小学校2642人、中学校5388人)。単純化すると1学級に1、2人いる計算になる。また、約2千~3千人がフリースクールを含む関係機関とつながらず、家庭で孤立している可能性がある。

 ■仕事掛け持ち運営
 焼津市のフリースクール「オルタナティブスクール しいの木」では小中学生20人が今春まで通っていたが、年度替わりに9人が学校に復帰した。「学校に戻りたくない子は無理に戻る必要はないが、戻りたい子の復帰は社会にも良いこと」と言う見崎聡代表。ただ、利用者の学費収入が減り、スタッフを雇えなくなった。地元の企業や住民から寄付も受けるが、子どもの状況が改善して復帰するほど持続的な施設運営が難しくなるジレンマは変わらない。
 浜松市南区でフリースクール空を運営するNPO法人の西村美佳孝理事長は「利益は出ないのが当たり前。スタッフはアルバイトを掛け持ちせざるを得ない」とギリギリの経営を続けてきた。学費は最低限の費用に抑えているが、負担が重くて利用を断念する保護者もいるという。
 行政支援の在り方に関しては、当事者の間にさまざまな意見がある。西村理事長は「施設ではなく、不登校の子のいる家庭に補助金を出してほしい。不登校の子のいる家庭は(フリースクールに通うと)学校の給食費などが二重払いになってしまう」と説明。施設への直接補助の場合、行政が基準を設けて施設を選別することにつながり、行政の関与が強まって施設運営の自由度が失われかねないとも懸念する。一方、見崎代表は、業務委託や施設補助を含めた他県の事例を参考に「子どものために、どんな形でも良いので行政が支援してほしい」と語る。

 ■有料を理由に拒否
 行政による支援に関しては県教委が24年度の予算獲得へ動いているが、担当者は「支援の対象を利用者にするか施設にするか、両方にするのか、他県の状況も調査して現在検討中だ」と説明する。
 一方、複数のフリースクール関係者によると、保護者への周知を学校に依頼すると、「フリースクールは有料なので情報提供できない」「責任を負わされる」などと拒否される例が相次いでいる。関係者の一人は「多様な受け皿の存在を知らないまま困っている保護者もいる。まずは、学校がフリースクールの存在を周知してほしい」と訴えた。
(社会部・大橋弘典)  保護者には情報必要
 不登校の問題に詳しい常葉大の太田正義准教授(教育心理学)の話 家庭の経済状況によって、フリースクールなどに通える子と通えない子が分かれてしまう問題があるので行政支援は必要だ。ただ、フリースクールは多種多様で、支援の方法次第で施設間の分断を生みかねず、支援対象の線引きがなかなか難しい。フリースクールなどの施設に関する情報提供は、利用料金や他の公的施設も含めて網羅的に示せばいい。不登校の子が増える中で情報提供しない学校があるのは非常に問題だ。不登校の子がいて困っている保護者には情報が必要になる。

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