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テーマ : 教育・子育て

公立中学校にエレベーター整備 静岡市「インクルーシブ教育」推進 進路選択の拡大に期待

 障害の有無にかかわらずともに学ぶ「インクルーシブ教育」の推進に向け、静岡市は4月から、同市葵区の城内中校舎にエレベーターを設ける工事を始める。供用開始は12月の予定。葵・駿河の両区から通いやすい立地の同校に設置することで、車椅子の利用など校内での移動に配慮が必要な生徒の進路選択が広がることが期待される。

校舎内に設置されているエレベーター=静岡市清水区の清水飯田中
校舎内に設置されているエレベーター=静岡市清水区の清水飯田中


 同市の公立中学校でエレベーターを設けているのは清水区の清水飯田中と由比中のみ。そのため障害があっても通常の学級で学習できる子供が中学に進む際、特別支援学校を選ぶケースが少なくなく、友達と同じ学校に進学することが難しかった。同市の公立小学校は全区の計7校にエレベーターを設けている。
 清水飯田中のエレベーターは3階建て校舎に設けられていて、現在は車椅子を利用する教員が常時使用。けがをした生徒らも一時的に使うという。1階乗り口の向かいにはバリアフリートイレを配置。二つある校舎はすべての階が渡り廊下でつながり、体育館はスロープで行き来できるため、車椅子でも校内各所への移動が可能だ。
 静岡市では2006年度以降、校舎の増改築に合わせてエレベーターの整備を進めてきた。城内中では既存校舎に増設する計画で、市内初のケースとなる。特別支援教育の視点から、葵・駿河の両区にエレベーターを設ける中学校がない点を重く見て検討を進めた。利用時の移動距離にも配慮したという。
 静岡県内公立小中学校のエレベーター設置状況(22年9月1日時点)は静岡市約7%、浜松市約18%などとなっている。静岡市は特別教室への空調設置も進めていて、市教委は「予算の兼ね合いが難しい」といった内情を打ち明ける。
 ただ、21年のバリアフリー法改正により、床面積2千平方メートルを超える校舎を新設する際は、階の間を移動できるエレベーターなどの設置が義務化。両市は誰もが支障なく学校生活が送れる環境整備に向け、車椅子使用者用トイレやスロープの設置とともに、施設の更新に合わせてエレベーターの設置を進める方針だ。静岡市の担当者は「インクルーシブ教育の理念のもと、全ての子が学びやすい環境に近づけたい」と話す。
 (清水支局・大村花)

 「合理的配慮」の提供 4月から私立校も義務化
 2016年に施行された障害者差別解消法で、公立学校を含む行政機関の「合理的配慮」の提供が義務化された。本人と保護者、学校で合意形成を図り、学びやすい環境を整えることを目指す。
 合理的配慮の理解促進を図るとともに、その充実のため、スロープによる段差解消やエレベーターの設置といったハード面での支援(基礎的環境整備)が関係機関で進む。法改正に伴い、24年4月からは私立学校でも合理的配慮の提供が義務化される。

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