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テーマ : 教育・子育て

障害編 担任に憧れ教員を志望【貧困連鎖からの脱出 伴走型支援の挑戦㉟ 第3部 障害編】

 「いい国つくろう、頼朝将軍」。俳優の中村獅童が、鎌倉幕府を開いた源頼朝を演じ、歌って踊り、解説する。テレビの教育番組「歴史にドキリ」。小6の高木明は教室で画面に見入った。
 「頼朝が将軍になった年は1192年だ」。担任の小西友則が解説した。
 「優しいし、心に響く授業が多かった。学校が大好きになりました」
 明は興奮気味に話す。
 歯科検診の前には、小西が児童に呼びかけた。
 「虫歯は怖い。放っておくと、脳に影響が出て、死に至ることもある」
 それ以来、明は熱心に歯を磨くようになった。
 「いじめがテーマの道徳の授業も衝撃を受けた」
 懐かしく話す明は今も「あんな先生になりたい」と考える。
 視覚障害でいじめられることもなく、学校は楽しかったが、帰宅すると、両親のけんかが待つ。
 その年の秋、購入から10年たたずに一軒家を手放して両親はついに離婚した。母と明、兄の3人でアパートに移る。しかし、両親の離婚という事実は兄弟に知らされなかった。明が振り返る。
 「けんかばかりだから分かってはいましたが」
 母の景子も「子どもには言いませんでした」と言葉を濁す。夫の晃司が自宅をいくらで売ったかは聞かされていない。ただ、滞納した固定資産税は残り、「少しずつ払う」と約束した、と聞いた。養育費を出す余裕もない晃司は「携帯電話代だけは払う」と約束した。景子はやむなく生活保護を申請する。
 保護費支給までは食事にも困り、地元の社会福祉協議会から米をもらってしのいだ。景子は「お米は助かりました」とありがたそうに話す。食卓の料理は保護費の支給後、格段に良くなった。
 「かき鍋おいしいね」
 明は夢中で鍋の具材をすくって口にした。景子が実家で「おいしいよ」と聞き、子どもたちを喜ばせようと用意した。
 明は「何度もかき鍋を食べました。あの頃の食事は良かった」と満足げに振り返る。景子もうれしそうに話す。「野菜も取れて体が温まり、安上がりな鍋物は食べ盛りの子にぴったりでした」
 その一方、明は寂しかった思い出も語る。
 「狭い部屋には友達を呼べなかった。恥ずかしくてどこに住んでいるかも教えませんでした」
 自分の部屋がなくなったのが残念だった。しかし、中学校の入学式を迎えると、制服代などは生活保護費から出た。
 「子どもの頃は分からなかったけど、本当に困った時に助けてもらえる生活保護制度って、すごいな、と今は思います」
 母が働き、不足分を保護費で補って生活は軌道に乗り始めた。だが、小学校では満点も取った明の成績に異変が起きる。
 「小学校は教科書もプリントも大判で、文字が大きかったから読めた。でも、中学校はそうはいかなかったんです」
 明がため息をついた。
 (文中仮名)

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